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「横浜レゲエ祭」主催、レゲエ世界チャンプが明かす“ビジネスで成功するための秘訣”3選/MASTA SIMON(MIGHTY CROWN)インタビュー

 無名の状態でアメリカやジャマイカに渡り、世界的アーティストに自分たちのための音源をレコーディングしてもらう。観客も出演者もほぼ全てが黒人の「サウンドクラッシュ」と呼ばれる音のバトルで世界一になる。小さなクラブからはじめた主催イベント「横浜レゲエ祭」で横浜スタジアムを満員にする……。
横浜レゲエ祭

2003年、八景島シーパラダイスにて初の野外開催となった「横浜レゲエ祭」※提供写真

 MIGHTY CROWN(マイティークラウン)は、そうやって普通の人なら「不可能」と言うことを次々と実現し、世界を舞台に活躍を続けてきたレゲエのサウンドシステムだ。その活動遍歴をまとめた『世界サウンドクラッシュ紀行』(イースト・プレス)には、ビジネスで成功するためのヒントも多く隠されている。
MASTA SIMON

MIGHTY CROWNのMASTA SIMON氏

 そこで今回は中心メンバーのMASTA SIMON(マスター サイモン)氏に、自らのアーティスト活動を振り返ってもらいながら、ビジネスで成功するための秘訣を3つ語ってもらった。

①「できない理由」ではなく「できる理由」を探して挑戦する

FAR EAST REGGAE CRUISE この7月15日には国内外のレゲエアーティストが集結する『FAR EAST REGGAE CRUISE』を開催するMIGHTY CROWN。何十組ものアーティストのライブがセットになった豪華客船クルーズは、日本では初めての試みだ。そうやってMIGHTY CROWNが前代未聞の壁を破る挑戦を続けられる理由は何なのだろうか。 「一つ言えるのは、俺たちは常に『できない理由』ではなく『できる理由』を探してチャレンジを続けてきたということ。俺は『物理的に不可能なこと以外はだいたい実現できる』と思っているし、もちろん失敗したこともあるけど、チャレンジもしていないのに『俺には無理』って言っちゃうのは何か違うんじゃない?と思っているから」
トロフィー

事務所には数々のトロフィーが並ぶ

 91年に横浜で結成したMIGHTY CROWNは、ステージでの選曲とMCで勝敗を競う「サウンドクラッシュ」において、99年に世界一に輝いている(NY開催の「WORLD CLASH 99」で優勝)。当時のサウンドクラッシュのプレイヤーはジャマイカにルーツを持つ黒人ばかり。勝敗の決め手となる「ダブプレート」というオリジナル音源を、有名アーティストに録音してもらうためには、ジャマイカやアメリカに何度も通う必要があった。そんな環境下で、レゲエの本場から程遠い日本の無名のサウンドシステムが優勝するなど、当時は誰にも考えられないことだった。 「本格的に活動するには日本とアメリカ、ジャマイカを何度も往復しなければならなかったし、そもそもサウンドシステムの機材を揃える必要があった。当然カネが足りない。でも俺たちは、サウンドシステムの活動に人生を賭けていた。だから土方の仕事からペンキ屋、通訳まで、できる仕事は何でもやって資金を貯めた。日本でも海外でも、レゲエのシーンで活躍している人たちには同じような努力をしてきた人が多いから、『俺らもやるしかないよね』みたいな感覚だったかな」

「挑戦を始める前の段階で諦めてしまうのはもったいない」

トニー・マタラン

「WORLD CLASH 2001」でトニー・マタランとやりあう様子 ※提供写真

 ただ、当初から「サウンドクラッシュで世界一になる」「レゲエの活動をビジネスにする」というドデカい目標を立てていたわけではないという。 「でも『今年中にスピーカーを2つ買ってサウンドシステムを大きくしよう』とか『来年はレゲエ祭のハコをもう1段大きくしよう』みたいに、小さな目標は常に立ててきたかな。そうやって一つの目標をクリアすると、目の前の扉が開いてまた次の道が見えてくる。その繰り返しをするうちに、大きなゴールに近づいていた感じだったと思う」  だからこそ、「挑戦を始める前の段階で諦めてしまうのはもったいない」とSIMON氏は話す。 「これは海外で活動するなかで感じてきたことだけど、日本人は新しい挑戦を前にしたとき、はじめる前から『自分には無理だ、できない』と諦めて、思考をシャットアウトしちゃう人が多いと思うんだよね。自分で自分の限界を決めることや、ステレオタイプに縛られて『みんなが無理というから無理』と考えることは、本当にもったいないと思う。1%でも成功する可能性があるのなら、その1%に賭けてみればいいんじゃないかな」  そんなSIMON氏が恐れているのは、失敗よりも「やりたいのにやらなかった後悔をすること」だという。 「『あの時にやってればなぁ』って後悔は特に強く残るからね。だから、『今から始めるにはもう歳だよ』って言われるような遅すぎる挑戦でも、やらないよりやるほうがいい。10代のやり残しがある人は、いま40歳でも50歳でもやったほうがいいし、還暦でもやったほうがいい。生きているあいだなら『もう遅い』と言わずにやるべきだと思う。そういう挑戦をするときこそ、『できない理由』より『できる理由』を探すことが大事になってくるんじゃないかな」
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成功する秘訣「お金を稼ぐのは大事だけど…」
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世界サウンドクラッシュ紀行

ジャマイカ、ニューヨーク、カリブの島々――。9割が黒人のレゲエ界で前人未到の景色を切り拓いてきた“世界のマイティークラウン”が、世界40か国200都市でのヤバい体験と、道なき道を切り開いた活動遍歴を書き尽くした1冊。
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