更新日:2022年10月01日 01:00
エンタメ

晋平太が語るMCバトル論「自分で恥ずかしいと思うようなラップは一度もしたことない」

 テレビ番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)で、初めてモンスター全員を勝ち抜き、賞金100万円を手にしたラッパー・晋平太。3戦目までの戦いを振り返った前編に続き、その後編をお届けする。

R-指定にスキル勝負を挑んだ理由

 4人目の対戦相手はR-指定。R-指定はUMB2010の1回戦で晋平太と対戦しており、そのときに使った「お待たせラップオタクの出番だ」というフレーズを冒頭にブチ込んできた。 「そのときと同じ返しをしようと思って必死に考えたんですけど、『だまれ、そこのガキ』という正解が思い出せなくて(笑)。結局、R-指定の『死人に口なし(梔子)だ』という最後のフレーズを拾って、『俺が死人に口なし 次々菊の花を蹴散らし』とフリースタイルを続けるしかありませんでした」  相手のラップを必死に聞いてアンサーを考える。何も見つからなければ、最後の言葉を拾って返すというのは晋平太の戦法のひとつ。一方でR-指定は、激しく韻を踏み合うスキル勝負を挑んできた。あえて、その戦いに乗った理由は? 「僕のほうが“バイブス”重視のタイプだし、スキルではR-指定の方が上です。でも、スキル勝負でぶつかっていけば、自分より上のものが確実に返ってくるので、絶対に面白い戦いになるんです。すごい密度で、うまいことを言いながらラップし続けるのはR-指定の特徴だし、彼と戦うことで、僕のそういう能力も引き出された気がしますね」  相手の得意なスタイルに合わせつつ、そこに情熱を乗せて上回る。それが晋平太の勝ちパターンのひとつで、R-指定との戦いも接戦ながら勝利を飾っている。レーサーが相手の後ろで風の抵抗をしのぎつつ、ギリギリでラストスパートをかける戦法にも似ているかもしれない。 「相手のスタイルに合わせるのが、バトルで勝つための一番の手段なんです。どうしてかというと、見ている側がわかりやすいから。『寿司とコロッケ、どっちがおいしい?』って聞かれても、『う~ん……』ってなるじゃないですか(笑)。違うもの同士の戦いだと好みの問題になっちゃうけど、同じもの同士なら見ている側も比べやすいし、観ていて面白いと思うんですよね」

「相手のスタイルに合わせるのが、バトルで勝つための一番の手段」

「般若くんとのバトルは何を言ったかも覚えていない」

 そしてラスボス・般若との対戦は打って変わってバイブスに重きを置いた勝負に。そのなかでも晋平太は、般若へのリスペクトの姿勢を崩さなかった。 「もともと僕はZeebraさんに憧れてヒップホップ好きになりましたが、最初に生で見たMCバトルは般若くんで、そこで心を打たれたんです。般若くんがいなかったら、今の僕はいない。これまでもいろいろなところで助けてもらったし、そのリスペクトをぶつけたいという思いが前提にあったんです」  ラッパー人生のすべてをぶつけ、リスペクトする般若に挑んだ晋平太。般若がラップのギアを一段上げると、晋平太もそれに合わせて応戦。互いの熱量はみるみる高まっていく。最終的には晋平太が審査員の満場一致で勝利したが、その結果には晋平太も般若も呆然。客席からは歓声が上がりつつも、不思議なざわめきの残る異様な現場だった。 「般若くんとのバトルは、自分が何を言ったかも覚えてなくて、相手に言われたことも一個か二個ぐらいしか覚えていなかったです。でもバトルって、最終的には流れに身を委ねるもの。相手が何を言うのかわからないなかで、僕はその場の反応を大事にしたい。だから、自分を信じるしかないんです。僕はMCバトルを何百回とやってきて、勝つことも負けることもありましたが、『自分で恥ずかしいと思うようなラップは一度もしたことない』と言える。そう思うことで自信を持つようにしています」  弱気な自分や、自分への疑いをもねじ伏せる圧倒的な前向きさ。それが晋平太の武器であり、フリースタイルダンジョン完全制覇の一番の要因でもあるだろう。 「『どうやったらバトルに勝てますか』ってよく聞かれますが、やっぱり技術だけじゃ勝てない。どっちのラップが技術的にうまいかって、明確な決め方もないですから。精神論になっちゃうけど、自分の思いをラップにブチ込むこと、本気の姿勢を見せることが大事になるんです」 また、漢と魂の勝負を行い、T-Pablowとケンカ寸前の状況に陥り……と、心身を消耗する戦いを続けても、最後まで全力のラップを続けた晋平太。その背景には、仲間たちと取り組んだMCバトルの「特訓」があった。
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仲間たちとの特訓は○○組手!?
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