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台湾で神様として祀られた日本兵/評論家・江崎道朗

祝詞は日本の国歌「君が代」と「海ゆかば」

 この飛虎将軍廟では毎日、朝7時と夕方4時の2回、タバコを神像の前にお供えし、祝詞を奏上する。21歳の若さで戦死した杉浦少尉に対して、せめてタバコだけでも楽しんでもらいたいという願いから、タバコをお供えするようになったのだという。  ちなみに毎日奏上する祝詞は、驚くなかれ、日本の国歌「君が代」と「海ゆかば」(信時潔作曲)なのだ。日本兵を祀るためには、「君が代」と「海ゆかば」がふさわしいと、飛虎将軍廟をお守りしている台湾の人たちが思っているのだ。  私も8月9日の夕方、お参りしたが、地元の皆さんと共に、日本語で「君が代」と「海ゆかば」を斉唱させていただいた。  その日の夜、飛虎将軍廟近くの料理屋で、飛虎将軍廟の関係者と会食をした。その会食に出席した地元の小学校の先生によれば、「飛虎将軍の心に触れ、子供たちに思いやりの心をもってほしい」として、近年では、飛虎将軍のエピソードを郷土史として教えており、学芸会では児童たちが杉浦氏の人生を演じているという。  台湾は近年「認識台湾」と言って、台湾人としてのアイデンティティーを育むため、戦前からの台湾の歴史を詳しく学ぶようになってきており、当然のことながら日本統治時代の歴史についても再評価が進んでいて、具体的には日本統治時代の建物の修復・再現が各地で進んでいる。  なお、この飛虎将軍廟の存在を聞いた日本人が近年、次々とお参りにくるようになっている(この飛虎将軍廟は趣旨に賛成される方ならば、どなたでもお参りできる。台南駅から西へ5キロの位置にあり、住所は、台南市安南区海尾寮同安路125号)。  そのご縁で、日本人のある篤志家が日本式の御神輿を飛虎将軍廟に奉納した。その奉納式が2015年3月10日に行われたが、日本人と台湾人が一緒にこうした奉納式を実施するのは台湾の宗教史上初めてのことであるという。  この御神輿奉納を受けて、「飛虎将軍を一度、里帰りさせるべきだ」という声が上がり、昨年(2016年)9月、飛虎将軍廟管理委員会の26人が飛虎将軍の御神体を飛行機の客室に乗せてわざわざ来日し、杉浦少尉の故郷である茨城県水戸市に里帰りした。  靖国神社などを念頭に、戦歿者を神として祀ることをあたかも軍国主義であるかのように批判する意見を聞くが、台湾では、日本の戦没者が神として祀られ、その廟を通じて日本と台湾の友好が深められている。  日本のマスコミ報道を見ていると誤解してしまいがちだが、中国共産党政府や韓国だけが、アジアではない。東日本大震災のとき、実に200億円もの義援金を台湾は送ってくれたのに、正式な国交がないがゆえに、日本のマスコミの扱いは小さい。しかし、日本の戦没者を神として祀る台湾のような「国」がすぐそばにあることを、日本人として知っておきたいものだ。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など’62年生まれ。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)など
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