ロシアのウクライナ侵略が日本の「対中政策」に与える影響。中国は漁夫の利を得ようとしている?
ロシアによるウクライナへの軍事侵略が泥沼化し、物資や資源の調達の面で日本への影響も大きくなりつつある。加えて、米国や欧州も巻き込んで中国に対峙しなければならない日本にとって、「対中政策」に陰りが見え始めた。
ロシアによるウクライナへの軍事侵略が長引き、日本はレアアースをはじめとする重要な物資や資源の調達難に陥る可能性が出てきた。それらのサプライチェーン(供給網)対策が急がれるが、日本に迫る危機はそれだけではない。
評論家の江崎道朗氏は「中国に対する日本の戦略的環境が悪化している」と警鐘を鳴らす。
「世界中の注目がロシア・ウクライナ情勢に集まっていますが、忘れてならないのは、日本にとっての最大の脅威は中国であるということです。安倍政権以降、同盟国の米国に加え、日米豪印戦略対話(Quad=クアッド)でオーストラリアとインドとの連携を強め、さらにイギリスやフランスなど欧州も引き込む形の総力戦で中国に対峙する包囲網をつくってきました。これが日本の対中国、対北朝鮮戦略だったわけですが、この戦略に陰りが見え始めていて、極めて問題だと思っています」
その理由の一つは米国だ。
「バイデン大統領はこれまで軍事的・経済的援助、人道的支援は継続するものの、『ウクライナに米軍は送らない』と米軍派遣を明確に否定してきました。覇権国家である米国の大統領がウクライナに軍隊を送らないとわざわざ言う必要はなかった。
この発言がある意味でロシア軍の侵略を容認し、助長するような面があったのではないでしょうか。あれはあえて言うべきではなく、いざとなったら『米軍としてはこれ以上の侵攻やジェノサイドは認めない』と言うべきで、『米軍派遣』はそのための“カード”として手元に置いておくべきでした。そういう意味で、バイデン政権は拙い対応をしてしまったと思います」
ロシアのウクライナ侵略が日本の「対中政策」に与える影響とは?
バイデン政権の「拙い対応」
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio
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『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』 経済的安全をいかに守るか? |
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