FUNK-Uはよれよれのテリーからのメッセージ――フミ斎藤のプロレス読本#079【テリー・ファンク編エピソード4】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
Tシャツの胸のところにプリントされているコピーは“FUNK-U”だ。Uの字のなかにはテリー・ファンクの似顔絵が描かれている。
“ファンク大学Funk University”のロゴと考えてもいいし、“ファック・ユー”の派生語ととらえてもいい。
シンプルに“ファンク・ユ-”だったら、たぶん“ファンクしまくってやる”とでも訳せばいいのだろう。とにかく、テリーはこのTシャツをたいへん気に入っている。色は霜降りのグレーがいい。
テリーはそれほど体が頑丈なレスラーというわけではない。いつもどこか壊れそうになりながら闘っているし、テリー自身もテリー・ファンクがいかにオールド・マンになってしまったかをちゃんと自覚している。強いか弱いかはあまり重要なポイントではない。
テンガロンハット&チャップスのテキサスの偉大なるカウボーイの定番コスチュームがみられて、サウスポー・スタイルのパンチとスピニング・トーホールドさえやってくれたら、テリー信者はほかになにも望まない。テリーの仕事は、観客を安心させることである。
「ヤングボーイ。みんな、ヤングボーイだったんだ」
いつのまにか50代に手が届いたテリーは、ニュージャパン・プロレスリング(新日本プロレス)のリングの風景に目をほそめた。
こっちのコーナーに立っているコシナーカ(越中詩郎)も、向こうのコーナーに立っているフユーキ(冬木弘道)も、ついのこあいだまではジャージの上下を着てリングのまわりをうろうろしてばかりいるヤングボーイ=若手選手だった。
グレート・カブキだって、カンパニー・プレジデントのサカグーチ(坂口征二)だって、かつてはヤングボーイだった。
両ヒザはガタガタだし、腰だってそうとう悪い。体じゅうが痛くてベッドからなかなか起き上がれないし、だれかに両手を引っぱってもらわないと車から降りられない日もある。いつもどちらかの足をひきずるようにして歩いていて、姿勢もやや前かがみだ。
でも、ドレッシングルームに足を踏み入れ、リングシューズにヒモを通し、霧吹きのポンプで髪を濡らすと、痛みはすうっと消える。こんなことが30年以上もつづいている。
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