FUNK-Uはよれよれのテリーからのメッセージ――フミ斎藤のプロレス読本#079【テリー・ファンク編エピソード4】
ジャスト・ワン・モア・ナイト。「あとひと晩だけ」がテリーの神への祈り。ひょっとしたら、お祈りではなくて呪文のようなものかもしれない。“伝説の男”は、たまたまそこに居合わせた300人ばかりのカジュアルな観客のまえでテキサス・デスマッチを演じてみせる。
調子がいいときは火炎殺法だって、焼きごてブランディング・アイアンだって、なんだってありだ。どこかでなにかがまちがえば、それが最後のワン・モア・ナイトになってしまうかもしれない。
テリーをだれよりも崇拝しているのは、じつはドレッシングルームになかにいるフェロー・ワーカーたちである。インディペンデント団体のハウスショーでは、ボーイズが子どもみたいな顔をして本物のテリー・ファンクとの対面を心待ちにしている。
「やあ、元気でやってるかい」なんてテリーから声をかけられたら、ポーッとなってその場にひざまずいちゃうかもしれない。オールド・テキサンは、そこにいて静かな笑みをたたえているだけでいい。
たぶん、テリーにはもう大舞台は必要ない。体がつづくうちはジャスト・ワン・モア・ナイトをつづけるつもりだから、できるだけ多くの人びとがいまのうちにテリーを目撃しておかなければならない。
テリー・ファンクは、ボブ・ディランとかミック・ジャガーとかワン・アンド・オンリーの存在と同じで、ひじょうに貴重なDNAの持ち主である。本物がいなくなってしまったら“テリー・ファンク体験”は地球上から消えてなくなってしまう。
“FUNK-U”は、よれよれのテリーからのワン・モア・メッセージ。“ファンクしまくってやる”でも“ファンクまみれにしてやる”でもいい。どんなふうに受けとめてもいい。
テリーはあくまでも“I Funk You”と考える。リングのなかにはあのフィーリングがある。テリー・ファンクはテリー・ファンクの一瞬をそこでみつける。そして、またジャスト・ワン・モア・ナイト(つづく)。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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