「自衛隊は衣食住がタダだからお金が貯まる」はウソだった!?
では、さらに日本の自衛隊の「住」話です。陸上自衛隊を中心に、曹士クラスの若い自衛官の多くは結婚していなければ営内(駐屯地内・基地内)で集団生活することを義務付けられています。プライベートな空間もロッカーくらいしかありません。「税金を使っての仕事時間以外の暖房使用は許せない」とのことで、営内の暖房のボイラーは夜には消され、震えて眠ることが多いと聞いています。
これもまた自衛隊の仕事が敬遠される原因ですが、10年前くらいから公務員バッシングが起こり「税金でテレビや冷蔵庫を使うなんてけしからん!」との訴えを受けて、会計検査院がテレビや冷蔵庫を使った隊員から電気代を徴収するようになりました。
でも、もう一度突っ込みますが、営内経費は給料表を作るときに事前に天引きされていたはずです。その上で、さらに自衛官のポケットから徴収するのですよ。しかも、「夜は仕事をしていないから暖房を止める」というのです。これは鬼畜の所業です。会計検査院が隊員個人から搾取した電気代は、国庫に納入されます。政治にものを言えぬ自衛官からの搾取。俸給表を作る段階で差っ引き、さらに毎月、電気代を二重取りするなんて、さすがにヒドすぎます。怒っていいと思います。自衛隊の給与体系がどんなふうに作られたか考えず、政治に文句を言えない自衛官から何度も搾取する会計検査院って、いったい何を考えているのでしょうか?
この昭和45年の国会記録の文末に、市ヶ谷記念館での三島由紀夫自害事件について報告があります。自衛官に一斉蜂起を叫んだあの当時、国会では「自衛官から営内経費は先に取っているのだから、トイレットペーパー代くらいは国が払ったらどうか」という議論があったわけです。「まさかこれがあの事件の原因?」と妄想したくなります。そんなはずはありませんが、なんだかなーと思います。
さて、情けない話ばかりでは気分が落ち込むので、最後にゴージャスなアメリカ軍のことを話しておきます。米軍人や軍属が基地の外に住む際、軍から受け取る住宅手当は沖縄の場合で月額16万~29万円、十分家族で余裕をもって住める額です。こんな住宅費の手当が可能なのは我が国が支払う思いやり予算があるからですが、軍に対して尊敬の念をもつなら、まず我が自衛隊からなんですが、会計検査院が隊員から冷蔵庫やテレビでの電気代を徴収していることを米軍が知ったら、そのみみっちいドケチっぷりに失笑されてしまいそうです。<文/小笠原理恵>おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
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