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大きさは2倍、毒の量は10倍…スズメバチより凶暴なオオスズメバチが都市部で増加中

オオスズメバチの過剰な駆除は生態系を壊す……

「なるべく巣が小さいうちに早期発見をして、専門業者に駆除依頼することが大事です。私が育てているミツバチも襲うオオスズメバチですが、ある程度の数を維持しなければ生態系や環境が乱れてしまう。共生していくことができれば、ハチも人も幸せになれる」
【松丸雅一氏】

【松丸雅一氏】

 この複雑な問題に、科学が解を与えてくれそうな気配だ。人間とスズメバチが共生できる画期的なツールを開発したのが高知大学農林海洋科学部教授の金哲史氏だ。  金氏は実験中、偶然にスズメバチが嫌がる化学成分を発見し、これをビジネス化するべく学内にベンチャー企業「KINP」を設立。来年の製品化を目指している。
金教授

「KINP」社が開発中のスズメバチ忌避剤は、ミツバチには無害という選択性を有する。忌避剤を吹きかけたスズメバチを手に載せて効果を示す高知大学の金教授(※ハチの針は安全のために抜いてある)

「今回発見した成分は、多くの花に含まれている匂いと同じ成分なので、スズメバチにも環境にも負荷を与えにくいのです」  スプレー状にした忌避剤をスズメバチにかけると、羽を震わせて体についた忌避成分を飛ばそうとするだけでおとなしくなる。人が触っても攻撃してこないという。 「羽音が聞こえたら、スプレーをシュッと撒布。そうすれば近寄ってきませんから、その間に逃げればいい。万一刺された場合はスズメバチが次々に集団で襲い掛かってきますが、自分にシュッとかければ二次攻撃がほぼなくなります」  現状では、スズメバチに刺された場合、アナフィラキシーショックを防ぐためにエピペン注射という抗ヒスタミン剤を打つことが唯一の対応策とされるが……。 「スズメバチへの対策としては不十分です。エピぺン注射は1本につき1万以上と高価で、しかも他人が打つと薬事法違反に問われるので、刺された当事者が自分自身の体に打つしかない。オオスズメバチに刺されれば金属バットで殴られたくらいの激痛ですから、そんな余裕はありません」  その点、金氏が開発中の忌避剤は、低コストでスズメバチの刺傷事故を回避できる。都市化の波の中で近づきすぎた人間とスズメバチの間に、適度な距離を保ってくれるのかもしれない。 【小野正人氏】 玉川大学農学部長、総合農学研究センター長、大学院農学研究科長。スズメバチ、ミツバチ、マルハナバチなどの社会性ハチ類を研究。著書に『スズメバチの科学』(海游舎) 【金 哲史氏】 高知大学農林海洋科学部農芸化学科長。専門分野は生命の活動を化学物質の視点から捉える化学生態学。昆虫の行動を制御する生理活性物質を調べ、その構造式に迫る 【松丸雅一氏】 千葉県市川市で’80年代から養蜂業を営むが、20年前に飼育しているミツバチがオオスズメバチに襲われて全滅したのを機に、駆除業を開始。年間300件の依頼をこなす。 取材・文/野中ツトム、福田晃広(清談社) 長谷川大祐(本誌) ― オオスズメバチが街にやってきた ―
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