【座間アパート9遺体事件】いまだ退去者はゼロ 入居者からは「住み続けたい」の声
事件のあった現場は小田急線相武台前駅から徒歩10分弱。戸建ての多い住宅街だが、築年の古そうなアパートも目立つ。近所に住む女性(82)は「この辺りは昔から住んでいた人が多い地域ですが、最近はそういう人たちが一軒家をどんどんアパートに建て替えているんです。このへんのアパートも、もともとは全部一軒家だったんだけど…」と話した。
事件があったのは低家賃のワンルームアパートだが、近くに大学などが多いわけではなく、入れ替わりが激しかったという声もある。近隣住民からは「東京じゃないし、この辺りで学生向けなら2万でも別に普通」といった意見が聞かれた。
相武台前駅近くでワンルームマンションを15年ほど所有していた経験があるという投資家のBさんは「周辺の家賃相場はだいたい把握していますが、このエリアはもともと家賃水準が非常に低い」と指摘。「だから、この物件はこれ以上家賃を下げても集客効果がないと思います。しばらく新規入居者の募集は難しいのではないでしょうか」とみている。
このような事件が発生すれば、退去や家賃下落などさまざまな悪影響が考えられる。では、それらを予防するためにオーナーができること、そして、万が一起こってしまった場合に考えるべきことはあるのだろうか。事故物件の経験者や専門家に話を聞いた。
これまでに所有物件で首吊りや練炭自殺、不自然死などが発生した経験を持つ投資家の加藤隆さんは、心理的瑕疵物件の告知義務について「最低1回転・2年間で解除されるという判例もありますが、今回の事件は心理的瑕疵のレベルは相当高いので、当面は告知し続ける必要があるでしょう」と指摘する。
室内に残る異臭の除去も難しい問題だが、「例えば体液が床下まで浸透しているようであれば特殊業者に頼んでリフォームした方がいいと思いますが、その場合は時間とコストは通常の倍程度かかると思います」と語る。殺人や自殺に対応した事故保険に入っていれば、腐敗臭の除去や特殊リフォーム、空室時家賃補填、家賃下落補填などもある程度カバーされるという。
今後の対応については「こういった事件を気にしない人に低家賃で入居してもらい、徐々に賃料を元に戻すか、退去が多いようであれば建物を取り壊して再建築する。あるいは駐車場や倉庫などとして活用するなどの道も考えられます」と話す。
今年3月、所有する物件で入居者が首吊り自殺したという投資家の森田正雄さんは「部屋は30平米の1DKでしたが、腐るようなものはほとんどなく、荷物も少なかったため処分費用が約10万円、原状回復は床、壁、天井などの張り替えで約30万円でした」と説明。家賃は本来の8割に下げて募集したが、リフォーム中に申し込みが入り、「こうした物件でも躊躇なく入ってくれる人はいるということが分かりました」と振り返る。
今回、事件が発生した物件が木造であったことは、オーナーにとって不幸中の幸いだという。「孤独死で腐敗した場合は床下に体液が落下してしまったりするのですが、木造であればその部分を取り換えれば済みます。RCだとその部分を除去するためにコンクリートを斫(はつ)る必要があり、大変な作業でかなりのコストがかかるんです」
心理的瑕疵のレベルは相当高い
首吊り物件でも躊躇しない人はいる
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