更新日:2022年11月20日 10:40
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ルイ・ヴィトン×シュプリーム コラボの裏で…小さなストリートブランドは潰されていく!?

渋谷

シュプリームを押し上げるならカルチャーを許容・守ることも考えてほしい

 原宿のショップ店員からはこのような目撃情報もある。 「ルイ・ヴィトンのデザイナーのキム・ジョーンズが来日したとき、渋谷や原宿の古着屋やセレクトショップをめぐり、ルイ・ヴィトンをサンプリングした80~90年代のブートやサンプリングアイテムを熱心に眺めていました。彼は日本のファッションカルチャーが好きで、『藤原ヒロシ氏(※原宿系の重鎮)から影響を受けた』と公言している。むしろサンプリングアイテムからサンプリング(=逆サンプリング)している部分も少なからずあるのでは?」(原宿のショップ店員)  80~90年代初期にルイ・ヴィトン非公認のサンプリングやリメイクアイテムで一世を風靡したダッパー・ダンという名前のテイラーがいる。今回のルイ・ヴィトンとシュプリームのコラボが発表された際、ショーノートにはダッパー・ダンに対する敬意が表されていたという。以下は、ハイブランドを取り扱い、国内外のファッション関係者が注目するカナダ発の通販サイト・情報発信メディア『SSENSE』に掲載された記事の引用だ。 <ここ1年で最も大きな反響を呼んだものといえば、間違いなくLouis VuittonとSupremeのコラボレーションだ。ショー ノートで、ダッパー・ダン(Dapper Dan)への敬意が表されていたのも、うってつけだった。ダッパー・ダンは80年代から90年代初期にかけて、非公認のロゴジャッキングと巧みな仕立てで、今日の主要なハイブランドの美学に影響を与えたテイラーだからだ。ダンはまた、ヒップホップ初期を代表するエリックB.(Eric B.)やラキム(Rakim)、LLクールJ(LL Cool J)などの衣装も手がけてきた。ハーレムを拠点としたテイラーの仕事と同様、ヒップホップ自体もまた、そのニッチな起源に打ち克ち、現代のポップカルチャーの主な立役者となった。ヒップホップの影響は、昨今の話し方や服装から、自分自身をいかにクリエイティブに表現するかという点にまで至る。突出した役割を担うラップ音楽で育った新時代のデザイナーの登場により、ファッション業界は、クリエイティビティに対するヒップホップの由緒正しいアプローチを真似るようになった。>(引用:SSENSE「だからコラボレーションはやめられない」2017年11月9日)  要するに、ルイ・ヴィトンが非公認のサンプリングやリメイクのアイテムによって良い影響を受けたということなのだが……。いま小さなストリートブランドに対して圧力をかけていることに、どこか矛盾が垣間みられる。  前出のA氏は、ファッション業界の背景を説明したうえで、「お互いに寄り添う姿勢が必要」だと強調する。 「ファッションの世界において、これまでハイブランドとストリートブランドは高め合ってきた部分がある。ストリートのサンプリングアイテムをキッカケに、“ネタ元”のハイブランドが認知度を高め、人気に火がついた例もあります。キム・ジョーンズは、こうしたストリートの文化やカルチャーを理解していることでしょう。ハイブランドとストリートブランドは、H社をはじめ、『カッコよくサンプリングするならアリ』という“暗黙の了解”のうえで共存してきました。今回の件では、ルイ・ヴィトンが都合よくビジネスとしてストリート(シュプリーム)の旨味にあやかって、利用しているようにも思えます。一方で、シュプリームがカルチャーよりもビジネスを優先したと見る向きもあり、ニューヨークではスケーターなどのコアなファンが離れつつあるという話も聞きます」  シュプリームとルイ・ヴィトンのビッグコラボ。今後ファッション業界とストリートはどのような方向にいくのか。 「“正式なコラボ以外は認めない”という判例を作れば、サンプリングに対する抑止力となるでしょう。とはいえ、私たちのような小さなストリートブランドを潰していくことが本当に正しいのか。ひいてはカルチャーまでも失われていくのではないかと危惧しています。シュプリームとコラボしてストリートを押し上げるというのなら、カルチャーを許容して守ることも考えてもらいたい」<取材・文/藤山六輝>
ライター・編集者。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』(共に彩図社)など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ【最新版】』(辰巳出版)がある。Twitter:@gold_gogogo
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