年齢は関係ない…丸山ゴンザレスがニューヨークで感じた“成功する人の特徴”
ニューヨークと聞いて何を思い浮かべるだろうか。最先端のビジネスや語学留学、ファッション、アート、音楽。そして、夢や希望。若者たちにとって“憧れの街”であることは言うまでもない。一方で、一般的に30代以上のおじさん世代となれば、夢や希望に対して何かと理由をつけて諦めがちだ。
そんな中、30代を過ぎてからは年に数回ニューヨークを訪れるようになったのが、新刊『GONZALES IN NEW YORK』(イースト・プレス刊)を上梓した“危険地帯ジャーナリスト”の丸山ゴンザレス氏だ。
1977年生まれの40歳。アジアやアフリカなどの危ない場所ばかり取材している印象の強いゴンザレス氏だが、なぜニューヨークをテーマに選んだのだろうか。そこには挑戦をやめない、等身大の姿があった――。
「ニューヨークに来ると苦い記憶を思い出します」
いまでこそテレビ番組「クレイジージャーニー」に出演し、様々な著書を発表しているゴンザレス氏だが、暗黒時代もあったという。考古学者を目指していた学生時代。身を立てるには長く険しい道程があり、就職氷河期が追い打ちをかけた。大学院を卒業後、行き場を無くした。20代の頃は、日雇いバイトやブラック企業、歌舞伎町の風俗ビルで怪しげな仕事にも手を出した。今日の飯をやりくりする惨めな生活。それでも自分はいつか……。
「暗黒時代にも心の支えになった漫画がありました。ハロルド作石先生の『BECK』(講談社刊)です。主人公が音楽と出会い、バンドの仲間たちと困難に立ち向かいながらスターになっていく。そこで描かれているニューヨークの姿がすごく好きなんです。作中で主人公の元バンドメンバーが斜に構えて『お前らなんかアメリカで通用しねえよ』みたいなことを言うんですけど、本人は素直な気持ちで憧れをもって、仲間たちと頑張る。『いま、自分の足で歩いている』って答えるんです。これって、“典型的な日本人”と“勝負に出て成功する人”の違いだなって、どん底の生活をしていながら、いつか勝負するときは笑われたっていいって心に刻みつけていました」
私たちは、夢がある人や挑戦しようとする人を「そんなのうまくいくわけがない」と笑いがちでもある。しかし、ニューヨークで成功しているのは、年齢を問わず、夢や希望、憧れを素直な気持ちで語って行動できる人たちなのだという。
「ニューヨークでは……、本当はそこに限った話ではないんですが、斜に構えていても何も生まれません。そんなの時間がもったいない。30歳を過ぎて自分がおじさん世代に突入してから思うのは、『いまがいちばん若い』ということ。2年経ったら2歳年をとる。当たり前のことで、誰でもわかっているのに、行動に移さない。思い立ったらそのときにやるべきなんです。そんな日本の空気に対して、ニューヨークには、何歳だろうが挑戦できる雰囲気があるんです。行ってしまえば大丈夫ですが、日本に住んでいると行くまでがむしろ大変だと思います。たとえば、ピースの綾部さんがアメリカに渡ったときに、世間では売れっ子芸人のどうかしている行動として、やや半笑いで『頑張ってほしい』っていう人もいました。どこかチャカすような風潮や空気がありましたけど、すでにキャリアのある人が別分野に行くために行動したことは、素直にすごいと思いました。もちろん、結果を伴って帰ってこれれば言うことはないですが」
「ニューヨークが良いなって思うのは、“年齢相応”って概念があまりないんですよ。たとえば、服装にしてもおじいちゃんがベースボールキャップとハーフパンツやジーンズとか、いわゆる若者っぽいものを身につけている。好きだからそうしているんです。TPOはありますが、スーツを着たサラリーマンのおじさんがスケボーで出社している姿も見かけます。自分が出社するのに適していると思うからそうしているのでしょう。もちろん、日本社会でそのまま当てはまるわけではありませんが、個人レベルでは何歳だろうが好きにしていいと思うんです」
年齢にとらわれず、好きに生きるニューヨーカーたち……。
ともあれ、30代を過ぎて会社ではある程度の仕事を任されたような人でも、PCスキルや語学など、「本当はこんなスキルがあればビジネスがもっとはかどるのに」と思いながら、“今さらながら無理だろう”と諦めているおじさんも多いかもしれない。だが、卑屈になっていてはいけない。ゴンザレス氏は「憧れとはチャンス」なのだという。
「人間が大きく変わるのはいつなのか。追い詰められたときや底辺に落ちたときではないんです。どん底暮らしを経験して、そこから這い上がることができたのは、憧れを抱いたからだと思っています。成功したりカッコいい仕事をしている人を見て、あんな人みたいになりたい、ああいうことをやってみたい。そう思ったときに、自分自身に変化を求めて積極的かつ自発的に動けるようになるのではないかと思うんです。だから、何かに対して憧れを抱いている人たちに伝えたいことは、素直に憧れを表に出して行動しましょうということ。そのマインドがあれば、おじさんだって変われるよってことです」
それでも「だれかに笑われてしまうのではないか」と不安になる人もいるだろう。
「たとえ、だれかに笑われたって、夢や憧れをもって動いたら意外と耐えられるので大丈夫。僕も30歳を過ぎてから英語の勉強を始めようとしたら、まわりの人たちから馬鹿にされたし、笑われました。笑うのは楽です。みんな適当に勝手なことを言いますよ。なんの責任もありませんから。でも僕は英語を仕事でも使いたかったし、なによりも英語を使える自分に憧れました。それで、友達が経営していたフィリピンのセブ島にある英語学校に行ったんです。あれから何年か継続的に勉強したおかげで、そこそこ喋れるようになりました。当時、僕を笑っていた人たちは、きっと笑ったことすら覚えていないでしょう。笑われたほうは、努力を重ねたことで嘲笑された悔しさを乗り越えることができた。それだけ行動したんだと自負を持てます。これが大きな自信になりました」
結局、だれかの揚げ足をとるだけで何もしてない人たちより、実際に行動を起こした人のほうが何倍もマシということか。
どんなに笑われようと今だと思った
人間が変わるのは憧れを抱いたとき
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ライター・編集者。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』(共に彩図社)など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ【最新版】』(辰巳出版)がある。Twitter:@gold_gogogo
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『GONZALES IN NEW YORK』 「クレイジージャーニー」で人気のジャーナリストが見た、“憧れの街"の裏側。多くの人種や職業の人が集まり、巨大な経済圏になっていれば、想像できる種類の犯罪や社会問題は必ずある。売春はあるし、ドラッグも頻繁に売買されている。マフィアもいるし、ギャングもいる。超セレブの家の近所に餓死寸前の貧乏人やホームレスがいたりする。おびただしい量のカオスを内包した巨大都市なのだ。 |
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