恋愛・結婚

五反田に住んで13年…ピンクのお姉さんからコワそうなおじさんまで「みんな一緒」に生きている

 しかし何気ない日常に、非日常が入り込んでくるのが五反田という街の真骨頂。例えば朝、チビを保育園に連れていこうと、目黒川沿いを電マで走らせているときのこと。ベンチに腰掛けたご婦人をパシャパシャと撮影されてる紳士が、ちらっと目に入ることがたまにあります。通勤通学に急ぐ市井の人には「仲のいいカップル」に映るかもしれませんが、エロライター出身の僕の目はごまかせません。だってカップルならスマホでパシャ程度のところを、がっつり一眼レフですから。じゃあ雑誌の撮影かといえば、編集者らしき人もいない。被写体がタレントやモデルなら、マネージャーらしき人もいない。そもそも被写体であるご婦人は、そんなにキレイでもない。一眼レフを構えたオッサンと何の会話もなく、何十枚も撮ってる。これどう考えても、インディーズ系熟女AVのパッケージ撮りだろ! 午前9時すぎという時間を考えると、朝イチでパケ撮りを済ませそこからホテルで本番なのでしょう。と、そのAVパケ撮り隊の横を、近くの保育園に通う園児たちのお散歩の隊列が横切る。このように日常と非日常、清濁が混在しているのがこの街の真骨頂なのです。「お前は汚いからあっち行ってろ」と排除することなく、共存する。五反田の一番の魅力はそこにあります。  先ほど僕は、「よくチビを連れて銭湯に行く」と言いました。これにも理由があります。品川区の中でも五反田や大井町、中延は下町のほうですから、モンモンを背負ったおじさんがたくさんいます。ひと口でいえば「反社会的勢力」とカラーひよこのように分けられてしまうのでしょうが、目の前で背中の鯉をゴシゴシ洗ってるおじさんは「ただのおじさん」です。 「パパのおせなかには、えがない。こっちのおじさんのおせなかには、えがある。でも、みんないっしょ」  これを教えたくて、僕は銭湯にチビを連れていってるんです。だからえらいもんで、限りなくブラックに近いようなマッサージ屋の電飾を「わ~、ピカピカ~。パパ、きれいだね~」と、まるでヒルズのイルミネーションを観るがごとくはしゃぐようにもなりました。つまり五反田という街全体が、「みんな一緒」ということを教えてくれるのです。  ……と最後に我が街・五反田の素晴らしいところを語れたので、もう電マ旅は終わりです。電マともお別れです。ここでサドルを置こう。山口百恵がステージにマイクを置いて去ったように、電マのサドルを置いて有終の美を飾ろう。 サドル …ん!? あれ!? サドルが抜けない! びろーんって長く伸びるだけで抜けないっ! イマどきのチャリって、こうなってるの? 親父が死んだとき、坊主が言ってたよ「死に様は生き様」って。サドルも置けないグズグズな〆、電マ連載の死に様にはピッタリだよ、クソがっ! 以っっっ上!!(厚切りジェイソンふうに)<取材・文・撮影/村橋ゴロー> 【村橋ゴロー】 1972年生まれ。ほとんどの家事とまあまあの育児をこなす、ライター・コラムニスト。千原ジュニアや田村淳など芸人連載の構成を多数手掛ける。その一方、ママ向けサイトit mamaでは、「どの口が言ってるんだ」という感じだが、妊活や育児についてのコラムを執筆中。また、『ゴー! ゴー!! バカ画像MAX』シリーズ(KKベストセラーズ刊)は累計190万部を突破。近著に『俺たち妊活部「パパになりたい!」男たち101人の本音』(主婦の友社刊)がある。Twitterは、 @muragoro
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