妻子と別居中のド底辺芸人(40歳)が抱える葛藤――「バイトしてたらネタを書く時間がないし、バイトしないと嫁に送るカネがない」
冗談で「お前、クズだなあ」と笑うことはあっても、意外と本物のクズはいない。しかし、なかには本物のクズがいる。しかもキング・オブ・クズ、それが芸人の中本幸一だ。芸歴17年の40歳にして給料1万7000円、嫁と子どもには逃げられた。売れない現状をすべて人のせいにし、20年支えてくれた奥様を裏切り、浮気。しかしこの男……天才的に面白いのだ。現代のテレビに飽きたアナタに送る、クズ芸人の魅力を電動ママチャリ(略して電マ)飛ばして再発見!
――売れない芸人を20年も支えてくれた奥さんを浮気というかたちで裏切るなんて、ホント最低だなっ! で、どうだった? よかった?
中本幸一(以下、中本):お前のほうが下品だよ! その浮気相手がサオリといいまして。まあメールしたりとゴチョゴチョやってたんですよ。そんなある日、パソコンに入ってる音楽をケータイに入れたくなったんですよ。でも僕はパソコン音痴。だから、それを嫁に頼んだんです。ケータイを預けて「パソコンと同期してくれ」と。
――よくもそんな危険な行為を……。
中本:当時、その怖さがよくわかってなかったんです。バイト先でそのことを話したら「パソコンと同期するって、ヤバくないですか? だって浮気相手のサオリとのメールとかバレません?」って言われて。それでも俺は、大丈夫やろとタカをくくってたんです。
――無知ほど怖いものはないな。
中本:それで嫁は毎日500mlのコーラを飲むんですよ。当時、いろんな名前がペットボトルに書かれてる『ネームボトル』仕様だったんですよ、コーラが。そうしたらある日、テーブルの上に『SAORI』ボトルが置いてあったんです。バレたか! とも思ったんですが、いや偶然やろと。偶然、コンビニで『サオリ』ボトルを手に取っただけだろうと。そして次の日、今度は2本目の『SAORI』ボトルがテーブルの上に! もう自分からゲロっちゃおうかと思いましたが、いやこれは偶然だ! これは偶然だ! って。
――そう願うしかないよな(笑)。
中本:それで3日目。何と『SAORI』ボトルがなかったんですよ! やっぱり偶然だったのかとスゲー安心しました。自分でゲロんなくてよかったーって。それで嫁に「今日はコーラ飲まないんだ?」って、聞いたんです。すると、『SAORIのボトルがなかったんだよ!!』って絶叫されて。俺は怖さのあまり、マジで腰を抜かしました。
――(笑)。でもいい奥さんじゃない。怒るにしても、芸人の嫁としてそういうひと手間を加えてくれるんだから。
中本:いや、そんなことはない。嫁は単に意地が悪いだけなんや!
――いや、奥さんの悪口はやめとけ。
中本:俺がクズなら、嫁だってクズですよ。以前、ふたりでパチスロ行ったんですよ。嫁は負けてたんですが、俺はボロ勝ち。だから嫁に「お前は負けてるから止めろ。俺は勝ってるし、今日はいいもの食おう。そうだ、カニ買ってこい」って言ったんですよ。それでカニを買いに行ったと思ったら、違う台で打ってたんですよ。しかもボロ負けしてる。せっかく俺が勝っても、これじゃあマイナスになっちゃいますよ。もう腹が立ったんで、こう言ってやったんです。「今から5秒数えるから、俺の前から消えろ! もし5秒後に俺の前にまだいるなら、お前のこめかみをぶん殴る!」って。
――何の宣言だ、それ(笑)。
中本:もう腹が立って仕方なかったんですよ。そうしたら、嫁はパッと立ち上がって、「あたしゃ金もスリルも欲しいんだよ!!」って絶叫して、俺の顔面をバコーン殴ってきやがったんです!
――ふたりとも、ムチャクチャだな(笑)。
中本:最初は、嫁を朝イチでスロット屋の行列に並ばせてたんですよ。その当時は「私、こんなことしたくない」って泣いてたのに、今やくわえタバコでパーン打ってますから。
――結局、仕込んだのお前じゃねーか(笑)。お前の良さをまったく“再発見”できないんですけど。掘れば掘るほど、お前のクズなとこしか見えてこない(笑)。
中本:だからそんなのは、ゴローさんが「埋もれた天才が話すトークはどれも爆笑モノだった」とか、ウソでも書いときゃいいでしょうが!
――段々、腹立ってきたわ! お前、とりあえず一発殴らせろ!
電マライター・村橋ゴローの東京ぶらりんこ旅 【第14回】妻子と別居中のド底辺芸人(40歳)が抱える葛藤――「バイトしてたらネタを書く時間がないし、バイトしないと嫁に送るカネがない」
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