更新日:2022年11月20日 10:52
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IT業界にはびこる「裁量労働制」の闇――どんなに働いても給料は変わらず“定額働かせ放題”

長時間労働で過労死しても立証が難しい

 Dさんの相談を受けた坂倉氏らは渋谷労働基準監督署に申告。同署は、Dさんの労働実態が裁量労働制を適用できないものと判断。Sに対して今年8月に行政指導を行い、月70時間以上の残業や、残業代未払いも労働基準法違反として是正勧告された。  坂倉氏は「裁量労働制の対象業務の規定自体が曖昧でザルであるため、ITやデザイン、ゲーム開発などの業界を中心に、裁量労働制が悪用される例が後を絶ちません」と言う。  Dさんの事例では、上司の指示で徹夜での業務を余儀なくされることもあった。坂倉氏は「裁量労働制なので、本来は上司が指示すること自体がおかしいのですが、現実には働き手が『裁量できない』ケースが多いのです。企業側が労働時間の記録すらしてないことも多々あり、膨大な仕事量を押しつけられて過労死しても、立証することが非常に難しくなる」と語る。政府はいま「働き方改革」の一環として、この裁量労働制の適用範囲を拡大しようとしている。 「企画業務型裁量労働制として、営業職にも適用される恐れがあります」(坂倉氏)  問題だらけの裁量労働制の拡大は、ブラックな労働環境がさらにはびこることになりかねない。 ― [ブラック企業]が減らない理由 ―
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