更新日:2022年11月20日 10:52
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IT業界にはびこる「裁量労働制」の闇――どんなに働いても給料は変わらず“定額働かせ放題”

政府は「自分らしく働く」というスローガンのもと「働き方改革」を推進している。しかし実際の労働現場では、さらなるブラック化が進行中。消費者が求める「便利さ」の陰で、多くの人々が過酷な労働に苦しんでいた!

働かせ放題「裁量労働制」が労働者を追い詰める

残業 成長著しい、ウェブや携帯のコンテンツ制作などを行うIT企業。しかしその労働現場では、24時間365日の対応が求められる。もともと忙しかったこの業界に、長時間働いても残業代が支払われず、それどころか一定の時間以外は労働した事実すら「なかったこと」にされるという、最悪のブラック労働が広がりつつある。  それを可能にするのがIT業界で続々と導入されている「裁量労働制」だ。これは、実際の労働時間に関係なく、労働者と使用者の間の協定で定めた時間=「みなし時間」だけ働いたとみなす制度。仕事の段取りや時間配分を自分で決められる働き手が対象となり、SEやデザイナー、メディア関係者などの19業務が対象となる「専門業務型」と、企業活動の企画や立案、調査業務などを行う「企画業務型」の2種類に大別される。  裁量労働制は、一見時間に縛られずに自分のペースで仕事できるように見えるが、実際は労働者に選択の余地はなく、ひたすら働かせ続けるということが起きている。なかでも最近注目を集めたのは、ゲーム制作などを手掛けるIT企業Sのケースだ  ブラック企業ユニオンのプロジェクトで、「裁量労働制ユニオン」も担当する坂倉昇平氏が解説する。 「私たちが相談を受けたDさんのケースは、’16年にSに入社、専門業務型裁量労働制を適用。一日10時間8分を“みなし労働”とし、ゲーム用ソフトウェアの制作を担当していました。ところが『ゲームの体験イベントの開催』、『ゲーム宣伝用のサイトおよびSNS運用』など、裁量労働制が禁じられている仕事もさせられたりして、時間外労働が100時間を超える月もあるなど、長時間労働を強いられたのです」  ところが、どんなに働いても毎月の給料は変わらず、「定額働かせ放題」という状況に陥ったという。 「しかも、長時間労働で適応障害になったDさんを『就業時間から大きく外れた出勤をしていた』として、退職勧奨のうえ辞めさせています。同社では、就業時間が10~19時とされていましたが、裁量労働制の対象者については、契約上の就業時間は『基本として労働者の決定に委ねる』とされていたにもかかわらず、です」(坂倉氏)
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長時間労働で過労死しても立証が難しい
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