「#MeToo」ムーブメントでセクハラ・パワハラ認定された人/されない人
また、社内では男性から女性へのセクハラ、パワハラ行為は常に監視され、発覚すると吊し上げられるというのだが、女性から男性への、そして同性から同性へのセクハラ、パワハラ行為はほとんど咎められないのだともいう。M氏と同じテレビ局に出入りする制作会社社員・F氏は、同局の女性社員から、もう何年も「下請けいじめ」そのものの行為を受け続けている。
「とにかく下請けの見下し方がすごい。いつでも契約を切れる、私が言う通りにすればいい、などというのは日常茶飯事。ハゲとかデブ、モテない、童貞、など性別やコンプレックスに関わることも言われる。訴えるといっても“男のくせに情けない”など、これまた性別で区別する。誰も逆らえず、助けてもくれません」(F氏)
大手紙の支局に勤める新聞記者・Y氏も、同じような経験をした。
「支局内ではこの数年で、男性上司から肉体関係を迫られたという若い男の記者が、そして女性上司から同じく肉体関係を迫られたという新卒の女性記者がいました。どちらも結構ヤバい感じで大問題になる、と思っていたら、いずれも若い記者が他部署に異動しただけで、上司の二人はこれまで通り勤務している。上(コンプライアンス機関)は“LGBT”に配慮したと噂されており、なんか矛盾を感じますね」(Y氏)
もちろん、セクハラやパワハラは許されることではなく「#MeToo」というムーブメントのおかげで、これまで誰にも言えなかった被害者たちから声が上がるなど、概ねコトは良い方向に進んでいるようにも思える。
しかしながら、ほとんど弁解の余地ももたせてもらえないまま、一方的にセクハラやパワハラとして告発され、もはや会社や社会から叩き出されているような人々も存在するようである。「セクハラやパワハラをする方が悪い」というのはもちろんだが、少々行き過ぎている部分があるようにも思えて仕方がない。
さらに、LGBTと言われる性的マイノリティーが加害者側であった場合に、被害者は救済されにくい状態が未だに続いている事実も「#MeToo」ムーブメントに比べれば、ほとんど注目されていないといっていい。この現象を単なる「ブーム」で終わらせないためにも、被害者に寄り添いつつも、しっかりと事実に注目し、セクハラやパワハラがなくて当然という社会の空気を醸成することが、何よりも重要である。<取材・文/山口準>新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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