呉は現存する旧日本海軍史跡の宝庫なり。カーマニア集団「MJ戦略参謀本部」伊達軍曹が往く!
清水草一ことMJ参謀長が率いるカーマニア集団「MJ戦略参謀本部」のNo.2伊達軍曹。輸入中古車ジャーナリストとして活躍する軍曹が、旧日本海軍の施設で日本遺産に認定された呉軍港へ往く!
――前回からの続き。戦前・戦中の東京では霞ヶ関の外務省前に海軍省と軍令部(旧海軍全体の作戦・指揮を統括した中央機関)が並んでいたのだが、昭和20年5月の空襲で全焼。現在、その跡地は農水省および厚労省となっており、旧軍を偲ぶものは「海軍省跡 軍令部跡」と記した石碑があるのみ。
しかしここ呉は、現存する史跡の宝庫だ。
例えば現在の海上自衛隊呉地方総監部第一庁舎。これは明治40年竣工の呉鎮守府2代目庁舎を、現在の海上自衛隊がそのまま使用しているものだ。そして第一庁舎の裏手には旧日本海軍の地下壕(旧日本海軍地下作戦室)も現存している。米軍艦載機の空襲を避けるため昭和17年秋に設計が始まり、昭和20年4月に完成したとされる地下施設だ。
「完成したとされる」と書いたのは、この地下壕に関する資料がどこにも残っていないからだ。関係書類は英連邦軍の進駐を前にすべて焼却処分され、当時を知る軍幹部も鬼籍に入った。それゆえ情報力を誇る海自でさえ「この施設についての正確なところはよくわからない」という状況なのだ。戦後唯一発見された関係書類は、軍人ではない「軍属」による手記のみだった。
そんな部分からも「旧軍の時代」と「現代」との間にある断絶を感じてしまうわけだが、だからといってすべての物事が断絶しているわけではない。
例えば海自隊員各位の所作とスピリットだ。
現役自衛官はこういったことを大っぴらには言いにくいのだろうが、筆者が身内の海自幹部に隠密取材したところによれば、「表向きは海上自衛隊ということで間違いないが、その根底に流れている本質的なスピリットは、旧日本海軍のそれを踏襲していると思ってもらって構わない」とのこと。もちろん悪しき部分ではなく、良き部分としての海軍精神だ。
空襲で焼き尽くされ、また自ら機密資料を焼却した昭和20年の日本人ではあった。しかし心の中までは何人たりとも焼き尽くすことはできない。旧海軍の伝統とスピリットをそのまま今に残す、海自隊員各位のビッとした所作。それを見るたびに、亡き父や祖父、あるいは戦前・戦中を生きた日本人各位の若き日の姿を見ることができたような気持ちになり、思わず涙する筆者であった。
まぁ現実的なことを言うなら、呉の場合は「進駐したのが英連邦軍だったのが幸いした」という部分もあるだろう。
ご存じのとおり横須賀と佐世保は、戦後進駐した米海軍が今なお(軍港としての)中心部を専有しているため、我々日本人はなかなかそこに近寄ることができない。しかし呉の英連邦軍は昭和31年に割とソッコーで撤退してくれたため、貴重な史跡を「我が隊」が使えるようになり、そして我々市民もそこへ出入りすることが可能になったのだ。
海上自衛隊呉地方総監部第一庁舎の見学は毎週日曜日、事前申請のうえ行うことができる。また旧日本海軍地下作戦室の一般公開も毎週日曜日、事前申請のうえ受け付けている。さまざまな防衛上の理由で中止になる週もあるので、詳しくは海上自衛隊呉地方隊の公式ウェブサイトで適宜ご確認いただきたい。つづく<近日公開予定>
【伊達軍曹】
輸入中古車ジャーナリスト。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。「手頃なプライスの輸入中古車ってサイコーだぜ!」というのんきなトーンの原稿を各誌やウェブサイトに多数寄稿している。愛車は新車で買ったスバルXV。輸入中古車400勝

伊達軍曹
- 天井のドームは昭和20年7月の空襲による火災で消失したが、平成11年12月に復元された
- 海自呉地方総監部第一庁舎に入ってすぐの壁に貼られているパネル。最上部の人物は呉地方総監の池 太郎海将
- 昭和20年7月の空襲で庁舎内部は火災を起こしたため、当時のオリジナルではないが、基本的な雰囲気は明治39年から変わらず
- 地下壕を裏手より望む。艦載機が投下する爆弾や戦艦の砲弾が命中しても大丈夫なように設計されているようだが、詳細は不明
- こちらが旧地下作戦室。広さは210㎡ほどで、高さは最大で約6m。左奥に見える扉は錆びついていて「開かずの扉」になっている
- 地下壕は見学できる場所が限られている。崩落部分があったり、掘りかけらしき地下道があったりと、全容はまだ解明されていない
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