更新日:2018年04月06日 20:51
スポーツ

松坂大輔の復活登板 球場が沸いた意外な場面

 海の向こうで大谷翔平という怪物が暴れたその翌日、遠く離れた名古屋では元祖怪物こと松坂大輔がマウンドに上がろうとしていた。大谷選手の活躍も注目を集めたが、間違いなくこの日、日本中の野球ファンがナゴヤドームの一戦を前に朝からソワソワしていたはずだ。
ドラゴンズにとってはナゴヤドーム開幕の3連戦ということもあり、駆けつけた報道陣は普段の倍以上

ドラゴンズにとってはナゴヤドーム開幕の3連戦ということもあり、駆けつけた報道陣は普段の倍以上

 記者がナゴヤドームに入ったのは、ドラゴンズの選手たちがウォーミングアップを始める14時過ぎ。バッティングケージ裏には森繁和監督が仁王立ちし、平田、大島といったドラゴンズの主力選手たちが思い思いに体を動かしていた。1塁側ベンチ前には数多くの報道陣が陣取り、練習風景を眺めていた。心なしか聞こえてくる立ち話の会話には「松坂」という言葉が多く聞こえ、なんとはなしにソワソワした空気が記者たちの間にも漂っていた。この日の実況を担当したあるアナウンサーはこう漏らした。 「当初4日の登板と聞いたいたので、自分の担当の前日だから気軽に実況できると思っていたら、まさかの5日の登板(苦笑)。今日はちょっと気合が入るというかね、背筋伸ばしながら実況しますよ(笑)」  松坂大輔移籍後初登板という話題性に、誰もが浮ついていたのである。  だが、肝心の松坂大輔の姿はどこにもなかった。球団関係者にも聞いたが「裏で調整してるのかな……」となんともつれない。関係者によると松坂は他の選手と違い、完全にメジャー流のウォーミングアップをしており、試合開始前に軽いランニングをする程度で、それまでは姿を見せないという。旧知の記者に聞くと、全体練習が始まった14時の時点では球場入りすらしておらず、球場入りをしたのは15時だったとか。
「徐々に昔のフォームに近づいている」とは試合を観たスポーツ紙の記者

「徐々に昔のフォームに近づいている」とは試合を観たスポーツ紙の記者

 そんな松坂が姿を見せたのはプレイボール30分ほど前。ベンチ前に出て軽くキャッチボールを始めると、ドラゴンズファンだけでなく、オレンジ色のユニフォームを着たジャイアンツファンまでもが一塁ベンチ上にスマホを片手に集まった。ライトもレフトも一塁側も三塁側も関係なく、両チームのファンから盛大な拍手で迎えられ、松坂はマウンドに上がった。記者の目の前にいた背中に「SAKAMOTO」と書かれたジャイアンツファンの女性は立ち上がり「松坂ぁ!!」と絶叫。記者はナゴヤ球場時代からドラゴンズを見続けているのだが、ジャイアンツファンとドラゴンズファンが一体となって応援をする姿に、思わず目頭が熱くなった。

両軍のファンから送られる声援

 しかし、立ち上がりからピンチは続いた。内野安打で立岡に出塁を許すと、すぐさま二盗を決められ、吉川の進塁打で3塁に進まれると、ゲレーロにアッサリと打たれて先制を許してしまった。このままズルズルと……スタンドの誰もが思った。しかし、続くマギー三球三振、好調な岡本も外角のカットボールで三振に斬ってピンチを凌いだ。松坂がストライクを取るたびに球場のあちこちから感嘆の声が漏れる。その一挙手一投足には、ファンを越えた注目が集まる。  その後もピンチは続くも、辛くも凌いでいく。豪快な……とはとても形容できないピッチング。ストライクゾーンを広く使い、緩急と細かい変化の出し入れで組み立てる投球術はどちらかと言えば老獪な……という言葉が適切か。圧巻だったのは4回。1アウト2、3塁というピンチで、2番・吉川尚輝をど真ん中のチェンジアップで三振、3番・坂本勇人を真ん中高めのカットボールでピッチャーゴロで斬って取ると、ジャイアンツファンから溜め息、ドラゴンズファンからは拍手喝采。まるで日本シリーズのような熱気が球場を包んだ。
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バッター松坂登場で球場のボルテージが上がる
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日刊SPA!編集。SPA!本誌では谷繁元信氏が中日ドラゴンズ監督時代に連載した『俺の職場に天才はいらない』、サッカー小野伸二氏の連載『小野伸二40歳「好きなことで生きてきた~信念のつくり方~』、大谷翔平選手初の書籍となった『大谷翔平二刀流 その軌跡と挑戦』など数多くのスポーツ選手の取材や記事を担当。他にもグルメ、公営競技の記事を取材、担当している

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