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本田圭佑がハリルに触れた発言が炎上中。どうなる「腐ったリンゴ」問題

代表監督をめぐって23年前にも「腐ったミカン」騒動が

 ところで、この「腐ったリンゴ」というフレーズに懐かしい思いがするサッカーファンもいるかもしれない。今から23年前の日本サッカー界を騒がせたのも同じように形容された人たちだったからだ。  1995年の11月。(以下肩書は95年当時のもの)代表監督の加茂周氏をめぐる去就がにわかに注目を集めていた。代表監督への評価を下す強化委員会は加茂氏ではワールドカップ予選を勝ち抜けないと判断。ヴェルディ川崎の監督だったネルシーニョ氏を後任に推薦したのだが、これを長沼健会長以下、協会幹部が覆してしまったのだ。
『ネルシーニョ すべては勝利のために』

『ネルシーニョ すべては勝利のために』(2011)

 川淵三郎副会長によると条件面で折り合いがつかなかったために断念したということだが、ネルシーニョ氏の主張は異なっていた。年俸の額やコーチングスタッフに日本人を起用することなどを受け入れていたのに、突如なかった話にされたのだ。  そこで、ネルシーニョ氏は「協会には腐ったミカンがいる」と捨てゼリフを浴びせたという話だ。  加茂氏をめぐる騒動については諸説ある。長沼氏の大学の後輩である加茂氏をかばおうと忖度(そんたく)が働いたのではないかとも言われているし、強化委員長だった加藤久氏が当時39歳と若く、重鎮に対して影響力を持てなかったからだとも言われている。

サッカー協会の収益の7割は、代表チーム頼み

 それでも、「腐ったミカン」騒動は協会内の政治力学にとどまっていた。だが、今回はスポーツ以外の要素がとうとう現役の選手にまで及んできた。ここに「腐ったリンゴ」問題の根深さがあるのだ。  いち選手が必要以上に力を持ち、監督の人事にまで口を出し、そして思い通りになる状況が出来上がってしまった。要するに、腐敗の質が変わってきているのである。
FIFAオフィシャルウォッチ「ウブロ」が発表した日本代表ビジュアル

FIFAオフィシャルウォッチ「ウブロ」が発表した日本代表ビジュアル(プレスリリースより)

 もちろん、どの国にもスター選手はいるし、その発言が影響を持つのは自然なことだ。ただし、日本のケースは特殊だ。他国に比べて、代表チームのブランドが大きすぎるのだ。  サッカー協会マーケティング部部長・野上宏志氏によると、年間収益のおよそ7割が代表関連による収入だという。ちなみに過去最大の約235億円もの収入を見込んでいる2018年度予算だが、これはロシアW杯でベスト8まで進んだ場合の賞金などを合わせた額だ。  このように、極めて多くを日本代表チームの人気に依存している現状にあっては、知名度が高くメディアへの露出も多い中心選手が協会にとってどれだけ大切な存在かは計り知れない。  そういうわけで、監督よりもスポンサー企業と密接な関係にある選手の主張の方が通ってしまうような、いびつな力関係が生まれたとしても何ら不思議ではないのだ。
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「背番号は協会とアディダスが決めている」
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