更新日:2018年07月11日 15:03
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金正恩が脱北する!? 米朝首脳会談で裏面合意(密約)はあったのか?

北朝鮮

米朝間の密約が金正恩の脱北を招く

──北朝鮮にとって、中国よりもアメリカに擦り寄った方がよりメリットが大きいということでしょうか。 高:北朝鮮にとって近隣国の中国に生殺与奪の権を握られるより、アメリカに擦り寄って経済援助を得る方が、長期的に見て金正恩の体制保証につながると判断したのでしょう。これまで、対立しているように映った米朝も、お互いにメリットがあると思えば、裏面合意(密約)も合理的な帰結です。19世紀イギリスの名宰相パーマストン卿が「イギリスには永遠の友も永遠の敵もいない。あるのは永遠の国益だけだ」と述べているように、トランプも金正恩も自国の国益を追い求めているのです。 高永喆氏──米朝首脳会談終了直後にはトランプが米韓合同軍事演習の中止を発表しました。アメリカは朝鮮半島における対中国への同盟相手を、韓国から北朝鮮へシフトさせていこうとする姿勢が見せています。そうすると、これまで韓国が共産主義の防波堤として、日米から多額の軍事的・経済的支援を受けて発展してきた道のりを、北朝鮮も歩むことになるのでしょうか? 高:金正恩は、韓国の朴正煕元大統領が強力な指導力を発揮して推進した経済発展モデルを、強く意識していると思います。北朝鮮は豊富な地下資源に恵まれていますし、本来国民の教育レベルも高いといえます。外資の積極的な導入と国際社会への復帰が叶えば、短期間で飛躍的な発展を遂げていくでしょう。しかし、そのときこそが金正恩の本当の正念場です。国民全体が豊かになっていけば、金正恩に対する不満も高まり、これまで起きてこなかった反金政権・自由民主化デモが徐々に発生する可能性が出てきます。 ——―これまでまったく起こる気配すらなかった内部崩壊が現実味を帯びるわけですね。 高:さらに現在北朝鮮で使われている携帯電話は約500万台と言われていて、制限がかかっているとはいえ、インターネットを使うこともできます。そうなれば、全国規模の反政府運動が巻き起こり、最悪の場合、金正恩が脱北、亡命することも決して非現実的なことではありません。アメリカは軍事攻撃や「斬首作戦」などのハードランディング路線ではなく、宥和的な態度を示しながら、血を流さないソフトランディング路線で北朝鮮国内の自壊を促そうとしている。それがアメリカの本当の狙いかもしれません。 【プロフィール】 高永喆(コウ・ヨンチョル)/拓殖大学主任研究員、韓国統一振興院専任教授、元韓国国防省専門委員・北朝鮮分析官歴任。 韓国全羅南道生まれ。1975年韓国朝鮮大学卒業(奨学生)、同年海軍将校任官、韓国艦隊・駆逐艦作戦官、特海高速艇隊長、海軍大学正規(18期)卒業。海軍士官学校本部隊長、国立海洋大学ROTC教官兼副団長、国防省日本担当官(防衛交流)在職。1993年、金詠三政権により、全斗煥、盧泰愚元大統領、軍政治団体ハナ会らとともに拘束(情報漏洩罪)。その後、金大中大統領の特別赦免・復権を受ける。1999年12月来日。テレビ、新聞、週刊誌、webメディア、SNSなどで北朝鮮問題について精力的に提言し、韓日友好に寄与。著書に『国家情報戦略』(佐藤優共著、講談社)、『韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱』(佐藤優対談、KKベストセラーズ)、近著に『金正恩が脱北する日』(扶桑社)がある。 取材・文/福田晃広(清談社)
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金正恩が脱北する日

元韓国国防省北朝鮮分析官が暴く緊迫の半島情勢!6月12日に行われた米朝首脳会談の最新情報も収録。

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