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金正恩が脱北する!? 米朝首脳会談で裏面合意(密約)はあったのか?

 アメリカ、北朝鮮の両トップが初めて顔を合わせた米朝首脳会談。両首脳が交わした合意文書において、非核化の具体的なプロセスについては一切踏み込んでいないにもかかわらず、アメリカは北朝鮮に体制保証を与えてしまった。これをもって、トランプが金正恩に一方的な譲歩をしたとの評価がされている。果たして、本当にその分析は正しいのか。最新刊『金正恩が脱北する日』(扶桑社刊)にて、北朝鮮の核・弾道ミサイルを巡る米朝の腹の内を暴いた、元韓国国防省北朝鮮分析官の高永喆氏に聞いた。

軍部クーデターを恐れる金正恩

──米朝首脳会談では、金正恩は体制保証にこだわりました。ご著書『金正恩が脱北する日』はセンセーショナルなタイトルですが、3代続いてきた金体制が現在危機的状況ということでしょうか。 高:金正恩の生死可否は、米軍や北朝鮮軍の行動次第で脅かされます。たとえば、北朝鮮が核を手放さない場合、金正恩の命をピンポイントで狙う米軍の『斬首作戦』がわかりやすい例でしょう。これまで北朝鮮は核を保有することで、米軍による北朝鮮本土への全面軍事攻撃を防いできました。しかし、金正恩が自分の命が惜しいばかりにアメリカの要求通りに核放棄しようとすれば、国の存続と自らの身の危険を感じた北朝鮮軍部は反発し、クーデターを決行するでしょう。金正恩は脱北・亡命せざるを得なくなることも大いに考えられます。 ──金正恩は自らの体制を保証するために、どのような戦略を考えているのでしょうか。 高:米朝首脳会談中に軍部クーデターが起きることを恐れた金正恩は、5月18日に軍首脳部の人事異動を行い、組織掌握力の低い人物に交代させました。軍の反乱の中核になりうる人材を追放したということです。今回の米朝首脳会談では核放棄を約束し、アメリカの軍事攻撃を回避することで時間を稼ぎつつ、軍部の不平不満を抑えていくのが基本的な戦略になるでしょう。
高永喆氏

高永喆氏

──米朝首脳会談後に発表された合意文書には、アメリカが一貫して要求していた「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(Complete, Verifiable, and Irreversible Dismantlement CVID)に向けての具体的な工程は盛り込まれませんでした。金正恩にとってはほぼ満点の結果ですが、一方のアメリカにとっては外交的敗北だったとする意見があります。 高:ご指摘のように今回、非核化に関する合意をしたとはいえ、当初アメリカが狙っていたCVIDに言及していませんし、具体的な内容がまったくない空疎な文書です。一部の専門家からも指摘されていて、私も同様の考えですが、裏面合意(密約)があった可能性も捨てきれないでしょう。 ──密約の存在がなければ、このような中身のない合意文書にならないということですか。 高:そういうことです。裏面合意(密約)は外交交渉の場では決して珍しくありません。今回なぜアメリカが北朝鮮にCVIDを強く求めなかったのか、それは実務者間の協議の結果、「北朝鮮は中国ではなく、アメリカの味方になる意志がある。ミサイルは中国の全都市に向ける」と合意したと考えれば、辻褄が合います。 ──公に報道されている情報だけを見ても、真の情勢はわからないということですね。米朝間の密約の狙いは何なのでしょうか。 高:アメリカの外交戦略として、将来脅威の存在となる中国を封じ込めるのが最も重要かつ優先課題です。従って、北朝鮮が中国ではなく、アメリカに付けば、段階的な非核化、つまり核凍結にとどめるといった約束が交わされたことは十分あり得ます。
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米朝間の密約が金正恩の脱北を招く
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金正恩が脱北する日

元韓国国防省北朝鮮分析官が暴く緊迫の半島情勢!6月12日に行われた米朝首脳会談の最新情報も収録。

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