金正恩と小泉進次郎に共通点あり!? リーダーの資質を勝手に比較してみた
闘争性では金一族も引けを取らない。大澤文護・千葉科学大学教授が3代の違いを分析する。
「金日成は反対勢力の台頭を抑え、徹底した『個人独裁』を築き上げました。その体制を維持するため、金正日は権力の一部を軍に委ねた。金正恩は祖父の築き上げた『個人独裁』権力を再び強化。『金日成回帰』を果たしました」
金正恩の母親、高英姫は北朝鮮に帰国した在日朝鮮人だった。金正日に雇われた料理人の藤本健二氏が遊び相手となり、実は日本の文化に親しんで育ったという。
「缶蹴りやベーゴマ、竹馬が好きで、日本のマンガやファミコンも楽しんでいました。’90年代には母親や兄妹と日本旅行に出かけ、東京ディズニーランドも訪れています」(朝鮮総連関係者)
10代半ばごろにはリーダーシップを発揮するようになっていく。
「大好きなバスケットボールの試合後、反省会で選手を褒めたり、ダメ出しをしたり。『指導者』として、常に自ら先頭に立つ姿勢を示していました」(同)
’10年9月に金正恩を後継指名した金正日が’11年12月に死去、金正恩体制が始動する。その後、北朝鮮は3回の核実験と数多くのミサイル発射実験を断行。国連制裁により経済事情は悪化した。「国内の不満が高まるギリギリの状態」(大澤氏が入手した脱北者への非公開インタビューより)まで追い込まれたものの、金正恩は’18年4月と6月に韓国、米国との首脳会談を実現させた。金正恩体制は現在、一応の安定を見せている。
「金正恩は祖父や父が守ってきた支配体制を維持するために、戦略的・合理的な決断ができるリーダーです。独裁体制に反発や対抗を示す勢力や人物は徹底的に粛清してきました」(大澤氏)
冷徹な決断力、そしてトランプ大統領を相手にした米朝首脳会談の外交手腕を評価されている金正恩。一方、進次郎の長所とは何か。
「情報収集力、人を見る目・センスがある。立場を異にする人と対話する姿勢が感じられます。官僚のレクチャーばかりでなく、藻谷浩介、飯田哲成、古賀茂明の各氏ら、自民党に批判的な識者からも話を聞いている。脱原発を主張した父親の本も読んでいるらしい」(ジャーナリスト・横田一氏)
「派閥に属さず、メディアの単独取材にも応じません。誰かに仕えてひざまずき、媚びる面がまったくない。それなのに礼儀正しい。“高転び”することの怖さを知っているのでしょう」(大下氏)
さらに演説に関しては、自民党はもちろん、永田町でもトップクラスだと言われている。
「場を盛り上げ、聴衆を引きつける力がある。子供に声をかけるなど、即興でやりとりできるアドリブ力も兼ね備えています。記念写真にも気安く応じて、偉そうな態度はとらない。人の心をつかむポイントを心得ています」(横田氏)
「以前は、父親の演説を録音したテープを聴いていました。最近は落語を聴いて、間の取り方などを勉強しているようです」(大下氏)
それでは、双方の弱点はどこか。金正恩の場合は、国民の生活向上などの内政面がまったくうまくいっていないことが挙げられる。
「南北・米朝首脳会談が実現した今、北朝鮮の人々が望んでいるのは自由経済のさらなる発展です。米国との関係正常化で経済制裁が緩和されれば、生活水準が上がることへの期待がさらに高まる。それでも暮らしが変わらないどころか飢餓が到来する事態になれば、体制への失望・不満に直結する。そうなると、これまで押さえつけられていた軍部が力を取り戻す可能性が出てきます」(大澤氏)
一方、進次郎の短所はどこか。
「失敗を知らないことです。挫折こそが政治家を育てるが、彼にはその経験がない。この先、カネでつまずくとは思えないが、あるとすれば女性問題ですね。将来のホープが独身であること自体がリスクとなります」(大下氏)
横田氏はこう語る。
「外交をはじめとした進次郎の政治的な実力は未知数。実績といえば、先ごろ『2020年以降の経済社会構想会議』会長代行として取りまとめた国会改革案程度。過大評価され、イメージ先行なのは間違いない。将来、金正恩と相まみえるときまでに、どう政治家として成長しているかに注目です」
2人が向かい合うとき、日朝関係、東アジア情勢はどんな方向に向かっていくのだろうか。(一部敬称略)
取材・文/片田直久 イラスト/おぷうの兄さん(おぷうのきょうだい) 写真/時事通信社
― 小泉進次郎と金正恩、もし闘わば ―
金正恩の弱点は内政!? 進次郎は過大評価!?
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