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格安シェアハウスの荒れた実態…サイコな同居人のせいでパニック障害に

ストレスが原因でパニック障害に…

 半年近く経ったある日、M子さんの本性を知ることになる。シェアハウスに帰ってみると、リビングのソファーでビールを飲んでいたM子さんに「一緒に飲もうよ」と誘われた。 「断るのも感じが悪いし、お酒でも飲んで打ち解けたほうが今後のためと思い、僕も一緒に飲むことにしたんですよ」  すると、M子さんはハイペースで缶ビールを空けながら、S美さんの悪口を言い始めた。 「美容部員のくせにブスだとかデブだとか……ここ3~4年彼氏がいないとかマシンガンのごとくS美さんをディスっては僕に同意を求めてくるので困りましたね」  井上さんが戸惑っていると、当のS美さんが帰宅した模様。リビングに入ってきたが、酒の勢いが止まらないM子さんは、そのまま悪口を続けた。 「ねぇ、デブスはなんで美容部員なんてやってるの? 誰だってやっぱり、メイクは綺麗な人に習いたいと思うよ~」  泣きながら自室に閉じこもるS美さん。井上さんの部屋はS美さんの隣なので、朝まですすり泣く声が聞こえてきたそう。 「お陰で寝不足だし、ものすごく嫌な気分になって。今日は会社に行かずシェアハウスで仕事しようと思いました。昼間は誰もいないので」  部屋で仕事をしていると、リビングから物音がするので「泥棒?」と不審に思い、念のためスパナを握りしめておっかなびっくり覗いてみると……。 「ソファーでM子さんとN夫さんが性行為の真っ最中で。唖然としましたね。なんだよ、こいつらきっと僕やS美さんに隠れてこんなことして興奮してるのかと思うと……ホント、ここって嫌なシェアハウスだなぁと溜息が出ました」  物音を立てないようにそっと部屋に戻ると、仕事道具を持ちスタバに向かった井上さん。 「もう、なんでこんな思いしなくちゃいけないんだって。その日は誰の顔も見たくなくて、みんなが自室にこもる深夜まで時間を潰してから帰りました。うんざりしながらシャワーを浴びようとバスルームに入ってみると……。また洗面台に茶色の長い髪の毛がいっぱい落ちていて。マジで勘弁してくれよと思った瞬間、動悸が激しくなり、呼吸がうまく出来なくなって。大量の冷や汗が止まらなくなってしまったんです」  少しでも気を抜くと、そのまま死んでしまうような気がして怖くなったという。 「気を失わないように、太ももを爪で引っ掻きながらその痛みでなんとか意識を保ちました。30分ぐらい深呼吸しながら踏ん張っていたら、徐々に動悸がおさまってきたので、シャワーは浴びずに自室のベッドに寝転んだら、安心したのかそのまま眠ってしまいました」  翌日、病院に行ってみると“パニック障害”と診断された井上さん。医者にはストレスが原因だと言われた。病気になってまで家賃を節約しても意味がない。 シェアハウス こうして、すぐに出て行くことを決めた。そのまま部屋に戻ると、必要最低限の荷物をスーツケースに詰め、とりあえずウィークリーマンションに住むことにした。 「ハウスのグループLINEに事情を書いて、家賃を2か月ぶん多く払うことで納得してもらいました。早く新しい部屋を見つけてストレスなくひとりでゆっくり暮らしたいです」  それからパニック障害の発作は起きていないという井上さん。今回の件で、お金より心と身体の健康が大事だと身に沁みて感じたそうです。<取材・文・イラスト/鈴木詩子>
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。
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