積水ハウスから55億円詐取した「地面師」たちの素顔。都内で200人以上、今後も被害は拡大!?
ただし、“主導者”は目下、逃走中だ。
「警視庁はフィリピンに逃亡したカミンスカス操容疑者(58)を国際手配しています。この男の旧姓は『小山』で、財務コンサルタントなどの肩書の名刺を持って過去の地面師詐欺にもたびたび関わっている有名人。フィリピンパブ好きが高じてフィリピン人女性と結婚したのですが、この男を5~6年前から知る元地面師によると、すでに離婚してオーストラリア人女性と再婚したようです。そのため、オーストラリアに渡った可能性も浮上しています」(小川氏)
背景には不動産業界ならではの事情もあるという。
「金額が大きくなるほど、積水ハウスのような大きな会社が引っかかりやすくなる。なぜなら、55億円ものお金をポンと払える不動産会社は限られる。優良物件とわかっていても、小さな不動産会社やデベロッパーじゃ銀行の融資が下りないんです。だから、積水側も『ほかの会社では手に余るのだろう』と判断して、話の出どころを精査しなかったのでしょう」(不動産関係者)
小川氏によると、こうした地面師詐欺を生業にしている人間は「都内だけで200人を数える」という。また、「詐欺だと知らなかった」と“善意の第三者”を騙って摘発を免れることが容易なため、不動産業界には平気で地面師の片棒を担ぐブローカーが少なくないとも。果たして、増加する地面師被害を食い止めることはできるのか……? その闇は深い。
▼所有者の入院時期を狙って積水ハウスに売買交渉か……地面師らが半年間にわたって準備していたことが明らかに。実際の地主は’17年2月に入院し、6月に死去しているため、入院したことを確認して詐欺計画を実行に移した可能性が高い。この事件を巡って「購入を担当した積水ハウスの担当者が自殺したという情報も流れた」(不動産関係者)という
●2017年4月 積水ハウス55億円詐取事件……五反田の旅館「海喜館」が立つ2000㎡の土地の地主に成りすまし、カミンスカス操容疑者らが積水ハウスから55億円を詐取。’17年8月に積水側が被害を公表して事件化
●2016年3月 新橋資産家女性失踪事件……新橋4丁目に10億円もの資産を保有する女性地主が失踪。その土地は繰り返し所有権が移転。地主の遺体が発見されたことから、地面師らの不正取引が疑われている
●2015年4月 世田谷5億円詐取事件……かつてNTT寮だった世田谷区の土地建物の売却代金5億円を仲介会社が詐取。本物の地主が契約に立ち会ったが、移転登記直前に購入者から受け取ったお金を持ち逃げ
●2013年8月 アパホテル12.6億円詐取事件……赤坂の120坪の土地の相続人に成りすました地面師らがアパグループに12憶6000万円で売却。直後に書類の偽造が発覚。その首謀者とされる人物は’17年に逮捕された
●2010年10月 新宿アパート9億円詐取事件……アパートなどが立つ新宿区内千数百㎡の土地を、所有者に成りすました地面師が港区内の不動産会社に9億円で売却。’16年6月に首謀者ら3人が詐欺容疑で逮捕された
取材・文/週刊SPA!編集部 写真/産経新聞社
※週刊SPA!10月30日号「今週の顔」より
この主導者らが、詐取した55億円の大半を懐に入れたという。
「成りすます“役者”はある程度のコミュニケーション能力が求められるので、人の扱いに慣れていて、身元が容易にはわからない人間を温泉街などの手配師ネットワークの中からスカウトすることが多いようです。そのため、仲居さんや元芸者が起用されるケースも。彼女らの“出演料”は数百万から1000万円程度が相場」(同)
このように地面師の手口は明るみに出ているが、実は今後も同様の詐欺被害が増える可能性が高い。
「地面師の歴史は古く、終戦後のドサクサに紛れて跋扈していたといわれていますが、近年は地主・家主の高齢化によって地面師詐欺を働きやすくなっている。一等地にも管理が行き届かずに空き家のまま放置されたり、所有者が亡くなられても相続登記未了の土地が増えているんです。地面師たちは詐欺に適した土地に目星をつけておき、その家主の健康状態などまで細かく調査して、タイミングを見計らっている。積水ハウスの事件でも、女将が入院したタイミングで犯行に及んでいます。今回の事件の被害額は55億円という大きなものですが、’13年にアパグループが12億円をだまし取られた事件など、数億円から10億円単位の詐欺事件は頻繁に起きている」(森氏)
地面師は都内だけで200人以上が跋扈!?
<地面師絡みの主な事件>
1
2
『週刊SPA!10/30号(10/23発売)』 表紙の人/ 高畑充希 電子雑誌版も発売中! 詳細・購入はこちらから ※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める! |
ハッシュタグ