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積水ハウスから55億円詐取した「地面師」たちの素顔。都内で200人以上、今後も被害は拡大!?

積水ハウスから55億円を詐取した「地面師」たちの素顔

空き家問題と東京五輪で今後も被害は拡大する

 10月16日、ニセの地主に成りすまして積水ハウスから55億5000万円を詐取したとみられる男女8人が逮捕された。いわゆる「地面師グループ」のメンバーだ。  事件が起きたのは昨年4月。東京・五反田駅から徒歩3分の一等地(約2000㎡)を巡って、経済小説さながらの架空取引が行われた。 「地元では“怪奇館”などとも呼ばれる旅館の土地が地面師のターゲットになった。抵当もついてないきれいな物件なうえに、立地がいいので100億円近い値がついてもおかしくないと言われていました。ただ、所有者の女将さんは旅館営業を数年前にやめても『絶対に売らない!』という姿勢だったので、多くの不動産ブローカーが売却を持ちかけては門前払いを食らっていたんです。だから、その土地が売りに出されたという情報が流れたときは、『ついに!』という驚きの半面、『だまされてない?』と怪しむ声も多かった」  不動産関係者はさもありなんという口ぶりで話すが、地面師たちは実に手の込んだ芝居で積水ハウスをハメたことが明らかになっている。
羽毛田正美容疑者

羽毛田正美容疑者

 今回逮捕された羽毛田正美容疑者(63)がその地主である女性を演じ、地主お抱えの運転手役や内縁の夫を演じるメンバーもいたという。このほか積水ハウス側の不動産会社に土地の売却を持ちかけた仲介役に、成りすまし役の手配師、印鑑偽造に関わった人物など計12人に逮捕状が出ているのだ。昨年からこの事件を取材し続けている犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。 「地主名義のパスポートを偽造したうえで東京都品川区の戸籍住民課で『印鑑登録証明書を紛失した』と改印を申請。ニセの印鑑登録証明書を取得して公正役場にも足を運び、公正証書まで堂々と取得していました。それらを活用して売買契約を交わす一方で、連中は旅館の鍵を自分たちで付け替え、積水ハウスの内覧にも応じていた。こうして1か月ほどで55億円もの大金をせしめたのです」  これには精巧な偽造書類を作成する“道具屋”も関わっている。 「シェアハウス『かぼちゃの馬車』を巡る不正融資事件では、スルガ銀行の融資基準を満たすために銀行の預金通帳の改竄が行われていたことが明らかになっていますが、こうした書類の改竄を行う道具屋の報酬は1万~10万円程度。けど、地面師が抱える道具屋はレベルが違う。印鑑登録書など、扱う偽造書類によって分業化されているようで、一件あたりの報酬が100万円を超えることもあるらしい。完全に職人の世界」(前出の不動産関係者)

所有者であるはずの女将は他界

 結局、積水ハウスが騙されていたことに気づいたのは、最初の契約を交わしてから2か月後のことだった。法務局から登記申請却下の連絡を受け、購入したはずの土地が地主の親族2人に相続登記されていた事実が発覚。所有者であるはずの女将は6月に他界したのだ。  地面師グループが用意周到に準備して詐欺を働いたことは間違いない。ジャーナリストの森功氏が話す。 「今回の事件の絵図を描いた人物とされているのは『池袋グループ』と呼ばれる集団を率いてきた内田マイク(64)。180cmほどの長身で、がっしりした体躯の大物詐欺師です。この内田を知る人物によると、不動産登記を片っ端からあげてクルマで現場を視察する部隊を抱えており、常に成りすましやすい資産家の物件情報をかき集めていたとか。’15年には別の地面師詐欺事件に関わったとして逮捕・起訴され、現在は服役中ですが、今回の積水ハウスの事件を含めて複数の大型詐欺事件に関与したとみられています」
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