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“兼業”紅白歌手・木山裕策――50歳でも変化を恐れない「転職人生」

50歳のリアルを歌に込めて

――歌手として50代のテーマはありますか? 木山:僕はデビューから家族をテーマにした曲を歌わせてもらっているのですが、基本的にはすべて実体験がベースとなっています。その歌をショッピングセンターやモールでだいたい500~1000人の方が聴いてくれる。今は週末1日2ステージ、月に3~4か所を回っています。この前、風呂で計算したのですが、デビュー以来の10年間で、のべにすると結構な数の人に聴いてもらっていることになります。ドームツアーで何万十人という観客を集める歌手もいますが、僕は同じくらいの人に10年かけて聴いてもらったんだなと。そう考えると、やっぱり絶対に嘘は歌えない。これからも、自分が人生を通じて得た生の気持ちを伝えていけたらと思います。  自分としては、50歳になって「衰えたな」という感じはないんです。見た目は置いておくとしても(笑)。まだまだ歌える。だから50歳になって自分を抑えるのではなく、逆にもっと開放していきたいですね。  生の気持ちを届けたいといっても、素のまま歌うのってかなり難しくて、僕はずっと「失敗したらどうしよう」とか色々考えちゃうタイプだったんです。でも、50歳になってようやくあれこれ考えずに、ストレートに自分を出せるようになってきた。ここまで来て、じたばたしても仕方ないじゃないですか(笑)。その意味で、50代は自分に素直に、開放していけばいいのだと思います。  僕らの世代、そしてさらに下の世代って、悲観的なことばかり聞いて育ってきました。バブルも味わってないし、暗い未来しかないって。でも、それで自分の枠にこもるのではなく、枠を広げて変わっていけば、それなりに楽しいことを見つけられると思うんです。そう前を向いてみんなが生きれるように、これからも歌い続けていきたいですね。〈取材・文/高橋健太〉 木山裕策さん「手紙」【木山裕策】 現役会社員の兼業歌手。1968年10月3日生まれ。大阪府出身。平日は会社員として働きながら、土日は歌手活動で全国を巡る。妻と子供4人の5人家族。デビュー10周年の節目となる今年5月に、ニューシングル「手紙」をリリース
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