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なぜ「AV女優のHIV感染」は発覚から1か月も伏せられていたのか? 謎が残る感染経路

過去にHIV感染がなかった理由とは

 一方、HIV感染者が(本人は知らなかったとはいえ)AVへ出演できてしまったことは業界側にチェック体制の不備があると言えるだろう。AV人権倫理機構の山口貴士弁護士はこう話す。 「出演者の性病・HIV検査については、すでに業界ルールとして提言を出していますが、あらためて業界団体6団体幹部が集まる会議にて、周知を徹底しました。また、マスコミから『発表が遅い』という声があったので、今後はより迅速な対応ができるよう、6団体間での報告・連絡体制の改善を行っていきます」 AV女優[HIV感染]の衝撃 ところで、読者のなかには、「AV業界でHIVの感染事例はこれまでなかったのか?」という疑問を持つ人も多いだろう。メーカー団体である知的財産振興協会理事で、業界暦30年以上のベテランAV監督・日比野正明氏は言う。 「’80年代のエイズパニックの際に、AV業界ではコンドームの着用が徹底された。だから、業界内でHIV感染があったという話は聞いたことがない。今回、マスコミは『AV業界でHIV発覚』と騒いでいますが、違うんじゃないですか。AV業界の外で起きたことが、業界に持ち込まれ、発覚したということでしょう」  つまり、これまではモザイクという日本独自のルールによって運良く感染を免れてきたのだという。 「しかし、近年のAV業界はネットの普及により口コミ評価を重視するメーカーが増えてきた。そうしたなかで、マーケットに合わせて本物の生中出しにこだわる作品が出てきた。本物のザーメンかどうかなんて見分けがつかないのにね。とはいえ、こういう風潮になった以上、性病検査が徹底されて、正しい方向に向かうことを期待したい」(日比野氏)  AV業界は今回の騒動を教訓としてすでに動きだした。日本プロダクション協会幹事の中山美里氏は言う。 「4月から適正AVの枠組みがスタートし、性病検査の徹底がルールとして明文化されました。しかし、重篤な病気が見つかった際にいつ、どこに、どのように報告するかという対策は講じていませんでした。これは不手際だったと認めざるを得ません。現在、早急に対応マニュアルを作成し、業界内の連絡体制を整えています」
AV女優[HIV感染]の衝撃

’17年の都内でのHIV感染新規判明は464件。感染経路は男性同士の性的接触が最多(出典:東京都HP)

 国立感染症研究所によると、昨年の新規報告数はHIV感染者が976人、エイズ患者は413人だった。’16年より微減したものの、’00年代以降のHIV感染者の増加傾向は先進国と比較して高いままだ。さらに「いきなりエイズ」の発症も多いのが日本の特徴だ。今回の騒動を機に、AV業界が牽引する形で、この不名誉な現状を変えていってほしいものだ。 <取材・文/週刊SPA!編集部> ― AV女優[HIV感染]の衝撃 ―
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