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大塚愛、夫の不倫相手を歌詞に? 怖~い“怨念ソング”6人の場合

④槇原敬之『SPY』

 恋人が浮気しているのではないかと後をつけて証拠を集めるほど、自らの情けなさへと回収される。そんな“病的”なまでのユーモアを存分に味わえる1曲だ。自身の実体験から生まれたという。 <超能力者のように彼女をだましてやれ 「今日あの娘と会ってたろ」驚く顔が見たい>と企てた歌詞の主人公は、<嘘も見抜けない程 恋に落ちた役立たずのスパイ>でしかなかった。  怒りを相手にぶつける前に無残にも自滅していく様が、平易な言葉で的確に語られていく。名曲だ。

⑤スガシカオ『甘い果実』

 ネガティブな妄想は、必要以上に感性を研ぎ澄ます。「甘い果実」の冒頭の描写は見事だ。 <受話器のむこうで 音がしているけど その部屋に誰か 他にいるんじゃないのかい テレビの音って 君はいっているけど 何かが動いた音に聞こえたんだ>  まだ何もクリアになっていないのに、一気に終末へと向かうほどの負のエネルギー。何に対する焦りなのかも分からない心理も怨念の温床なのだろう。

⑥ジェニー・ルイス『She’s Not Me』

 最後は、一風変わった曲。「浮気をした」と打ち明け、自分から関係を壊しておきながら、「私とは違って簡単な女に逃げた」元カレを非難する歌詞だ。  しかし、怒りをぶつけるでも、悲しみに暮れるでもない。ただ、その女は「私ではないのよ」と強調するのみ。子供までできた元カレの新たな恋愛、その風景に欠けているもの、それが「私」だという曲なのだ。  さて、これは強がりなのか、諦めなのか、冷ややかな反撃なのか、はたまた行き場のない悲しみなのか。聴く人によって、分かれるところだろう。
 というわけで、今回の離婚で図らずもソングライターとして再び注目された大塚愛。この経験から良い曲を書いて、怪我の功名となれば、せめてもの救いと言えるだろうか。 <文/音楽批評・石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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