更新日:2019年01月01日 16:23
エンタメ

紅白で魅せたユーミン。もう生歌がきつい現実と、名曲を誰が歌い継げるか問題

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あけましておめでとうございます! #紅白楽しかった!

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キャロル・キングをカバーしたレディ・ガガの場合

 そこで考えたいのが、2014年にグラミー賞のイベントでキャロル・キング(76)の「君の友だち」をカバーしたレディ・ガガ(32)のケースだ。ボーカリストとしてのガガは、体力的にキャロル・キングを上回っているために、正攻法では原曲のたどたどしさが再現できなくなる。  だから、ガガは歌のフレージングによって自ら破損を作り出したのだ。みずみずしい声や豊かな音域にフタをするように、歌詞を投げつける。歌い上げたくなる気持ちや、オリジナリティを加えたくなる下心を自制して、語りに重心を置いたことで、キャロル・キング特有の親密さが保たれたというわけだ。  この種の大局的な判断を下す力は、音楽のことばかり考えていて身につくものではない。やはり、普遍的な美徳を信じるかどうかの問題なのである。現状、日本の音楽シーンを見渡して、そこまで懐の深いシンガーはいるだろうか?  そういうわけで、ユーミンを歌い継ぐ人物は簡単には見つからないのだ。今回の紅白出場歌手なら、aiko(43)や島津亜矢(47)はどうだろうとか考えてもみるが、それでもすくい取れない何かがユーミンの楽曲にはある。  改めてその価値を知ると同時に、大きな宿題を与えられたパフォーマンスだった。   <文/音楽批評・石黒隆之> 
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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