JOC・竹田会長の会見が「質疑応答なし」になったワケ。贈賄疑惑の真相は?
「コンサルティング契約は適正なもので違法性はない。稟議は通したが、意思決定のプロセスに自分は関与していない……って、そんな言い逃れにしか聞こえない主張を一方的にまくし立てるだけの会見なら、やらなかったほうがよかった。実際、記者からの質問を一切受け付けなかったことで、批判の声が大きくなってしまったわけですから」
大会関係者がこう嘆くように、わずか「7分間」で打ち切られた釈明会見は、疑惑を晴らすには程遠い内容だったと言えよう。
1月15日、2020年東京五輪・パラリンピックの招致を巡る「贈賄疑惑」が取り沙汰されている日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が記者会見し、自らに降りかかった疑惑を強く否定した。 そもそもの発端は、竹田氏が理事長を務めていた大会招致委員会(現在は解散)が、シンガポールのブラック・タイディングス社(以下、BT社)に「コンサルティング料」の名目で180万ユーロ(約2億3000万円)を送金したとされる’13年まで遡る。カネは2020年の五輪開催地が東京に決まる直前の同年7月と10月の2回にわたって振り込まれたが、この支払先であるBT社の代表者が、開催都市決定の投票権を持つIOC委員だった国際陸上競技連盟のラミン・ディアク前会長の息子、パパマッサタ・ディアク氏に近い人物だったため、カネの一部がBT社を経由してディアク氏側に流れたとの疑いが浮上。ここにきて、フランス予審判事が「贈賄」の容疑で正式捜査を開始したとされる。’16年にも同様の疑惑が持ち上がっていたものの、このときはJOCが調査チームを設置。「違法性はなく、疑念は払しょくされた」と結論づけていた。 果たして、真相はどこにあるのか……? 元JOC国際業務部参事で、長野五輪の招致活動において渉外参事も務めたスポーツコンサルタントの春日良一氏が話す。 「国内的には’16年のJOCの調査委による調査報告書によって白黒はついたという認識だったが、フランス当局からすれば、ようやく予審に漕ぎつけ、起訴するかどうかの重大局面に入ったという話。竹田会長はIOC委員としての権限をはく奪されてもおかしくない状況で、実際、重大に受け止めたIOCは倫理委員会を招集して本人に事情聴取もしている。11日に倫理委が出した結論が『推定無罪』だったため、フランス当局の結論が出るまでは竹田会長をIOC委員として認めることになったが、身の潔白を主張したい竹田会長が強引に会見を開こうとしたため、IOCが推定無罪で行う必要のない会見などやめろ、と直前でストップをかけたのです。そんなドタバタがあったため、あのような質疑応答のない会見となってしまった。ただ、世界的に関心が高い事案なので、海外メディアが多く集まり、逆に東京五輪のイメージを毀損し、それが世界に発信されてしまった格好です」 疑惑のキーマンは、紛れもなくディアク親子だ。ロシアが組織ぐるみで行ったとされるドーピング問題の隠蔽工作や、リオ五輪の招致活動を巡っても賄賂を受け取っていたことが明らかとなっており、リオの事件では、資金提供の仲介役を務めたブラジルの五輪委員会元会長・カルロス・ヌズマン氏が逮捕起訴されている。春日氏が続ける。 「FIFAの汚職にも絡んでいたという疑惑もあるが、IOCのサマランチ会長、FIFAのアベランジェ会長と、“スポーツ・マフィア”のビッグ3などと並び称された国際陸連のネビオロ会長が亡くなった後、その全権力を掌握し、利権を手中に収めたのがラミン・ディアク氏でした。ただ、’13年にIOCがバッハ体制になってからは、エージェントやロビイストになるには倫理規定に基づき、署名・宣誓しなければならなくなり、これに抵触する招致活動はできなくなった。’13年以降の厳格化された規定なら、おそらくBT社はコンサルティング活動をできなかったはず。換言すれば、緩い時期に東京五輪の招致活動が行われていたということ」
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