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発達障害当事者が働きやすい職場とは? 大切なのは「適度な無関心」

「発達障害」という言葉が広まったことによる意義とは?

 働き方に関わらずより普遍的な発達障害当事者の悩みについても焦点が当てられた。「発達障害」「グレーゾーン」という言葉を広める一翼を担った姫野氏は、その言葉の力について語る。

姫野桂氏

「『発達障害』『グレーゾーン』という言葉が広まったことで、真面目で手の抜きどころがわからずいつも一生懸命なのに、なぜか成果が出ず人一倍疲れてしまう、そんな当事者の悩みを理解できる人が徐々に増えてきてくれるはずです。  ですが、ADHDは10人に1人、ASDは20人に1人、私も発症しているLDに関しては測定が難しいのですが、発達障害の症状に当てはまる方は思ったよりたくさんいて、その症状は十人十色。『発達障害当事者にはこう接するべき』というステレオタイプ化には気を付けたいですね。  また、言葉ができたことでかえって『自分は障害者だったんだ』という事実を突きつけられるという側面もあり、それに納得できる方もいれば、ショックを受けてしまう方もいるので、十分なケアが必要になってきます」  それに対し、「当社で採用した発達障害者の方は皆口をそろえて『障害だとわかってほっとした』と述べている。『発達障害』という言葉を広めたことは大きい」と福田氏は姫野氏の功績を称える。  常見氏の言葉を借りれば、「発達障害」という言葉は今はまだ「幸せな使い方」をされている。つまり、このような生き辛さを抱えた人がいるから配慮しようという意味で使われているということだ。しかし、今後、言葉の意味が変容して「発達障害」という言葉が一種の侮辱語になってしまう可能性もなきにしもあらずだ。そうならないよう気を引き締めていきたいということで、イベントは盛況のまま幕を閉じた。

「発達障害の同僚と衝突してしまう場合、どうすればいいのか?」など、来場者からもさまざまな質問が投げかけられた

 とはいえ、このような議論がイベントで活発に話されるようになったこと自体が、言葉が浸透した意義ともいえるだろう。今後も発達障害や多様性に関して、さまざまな角度で自由に議論ができる世界が広がっていってほしい。 <取材・文/櫻井一樹>
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発達障害グレーゾーン

徹底した当事者取材! 発達障害の認知が広まるなかで増える「グレーゾーン」に迫る

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