発達障害当事者が働きやすい職場とは? 大切なのは「適度な無関心」
’19年3月13日、「発達障害当事者が働きやすい会社」をテーマにしたトークイベントが本屋B&Bで開催された。同イベントは『発達障害グレーゾーン』の刊行を記念したものでもあり、著者の姫野桂氏、家族から発達障害を疑われているという働き方評論家の常見陽平氏、発達障害者の雇用を積極的に行っているグリービジネスオペレーションズ代表の福田智史氏の3人が登壇し、約2時間に渡る熱い議論が交わされた。
NHKで特番が組まれ、書店に行けば関連本が山ほど出るなど、近年、さまざまな場所で取り上げられている「大人の発達障害」。「他の人が簡単にこなせる仕事が自分だけできない」「人とコミュニケーションを取るのが苦手」「衝動的な言動から対人トラブルを起こしてしまう」「光や音に敏感で仕事に集中できない」など、当事者が抱える生きづらさは多種多様だ。
なかでも多いのが、「就労」に関する悩み。「発達障害」という言葉の認知度は上がったものの、やはり世間一般での理解度はまだ低く「クローズ就労(=会社には障害を隠した状態)」せざるを得ない当事者も多い。そのような状況を打破すべく、有識者3名はどのような見解を述べるのか。イベントの様子と共にお届けする。
福田氏が代表を務めるグリービジネスオペレーションズは、なんと社員の7割以上が発達障害などなんらかの障害を抱える人たちで構成されている。そのような会社を作り上げてきた中で、福田氏は発達障害当事者が働きやすい職場作りのための経営者の心構えについて、日本の会社経営の常識を覆す斬新な意見を述べた。
「グリービジネスオペレーションズでは、発達障害当事者のストレスの種となる要素を極力取り除くために、電話対応が必要な業務や納期を守らなければならない仕事を徹底して排除しています。なぜなら、当事者にとってある程度、仕事の環境がゆるいほうがより個人の自立を促すことができると考えているからです」
そして、自分や社員同士がお互いと向き合うスタンスにも、ある意味での意識改革が必要だという。
「従来の経営者は社会人なら『こうあるべき』というある種の“期待感”を持って社員と接していましたが、これからはいい意味で社員に期待しない、『適度な無関心』で臨むことが大切です。とはいえ、会社という一つの組織に属している以上、バラバラに行動されても経営が立ち行かなくなります。
社是やコーポレートビジョンといった意識の統一のもとに『適度な無関心』で接してください。ただし、掲げるビジョンは持続可能であるよう曖昧にして、決してひとつのゴールを作らないよう注意が必要だと思いますね」
これからの経営者に求められる「適度な無関心」とは?
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