更新日:2019年04月25日 15:11
エンタメ

K-POPが世界で勝つ理由、Perfumeに感じたJ-POPの“余裕”

モノマネの最高峰、K-POPのたくましさと辛さ

 いわば、オリジナリティの放棄であり、商売をする先々の文化に同化していくことに特化した合理的なメソッドなのだ。そんなしたたかな認識から、彼らは真剣かつ、徹底的にモノマネを追求している。音楽の知識や、創作上のアイデアも、その点に集約される。ここに、日本のポップスにはない、K-POPのたくましさがあるように感じるのである。  しかし、同時に、K-POPの極端に短い消費期限、いたたまれない刹那さを認めないわけにもいかないだろう。  確かに、BLACKPINKのダンスや歌の切れ味は鋭い。筋肉の質まで欧米化したような力強いパフォーマンスには圧倒される。だが、それは取り替え可能な、見た目にわかりやすい能力の消費に過ぎないのではないだろうか?  BTSやBLACKPINKの見事な欧米化、平準化には、文化や芸術よりも、労働の香りが色濃く漂っているのだ。筆者は、そこに言いようのない辛さを覚える。

Perfumeにも感じたJ-POPの“余裕”

 だからこそ、同じコーチェラのステージに立ったPerfumeが際立つ。彼女たちのパフォーマンスには、ブラックミュージック的な排気量やアタック感もなければ、ミュージカルのような恍惚感もない。つまり、洋楽一般の興奮を再現する度合いにおいては、BTSやBLACKPINKに軍配を上げざるを得ない。

 だが、Perfumeのプログラムには、人を楽しませる余白と、新たなアイデアのためのヒントが散りばめられている。オーディエンスが立ち止まって、遊べるスペースがあるということだ。紛れもなく、BTSやBLACKPINKのステージングには皆無な要素である。短期的なリターンが生命線のK-POPにはない余裕を、過小評価すべきではないだろう。  日本人は、このアドバンテージをかなぐり捨ててまで、K-POPの世界戦略のすべてを真似る必要はない。もう少しだけグローバルスタンダードに寄せるべく、良い点は学び、盗む程度のアプローチにとどめておくべきだと思う。  もっとも、日本の音楽市場が相対的に豊かである限りは、との条件付きだが。 <文/音楽批評・石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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