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ヤクザになった若者たちの理由。暴対法でがんじがらめの今、なぜ?

フロント企業に就職。そのまま組員に……

 現役の構成員たちが次々に足を洗うなか、いずれの組織も新人の獲得に知恵を絞っている。関西の組織に籍を置く山本健司さん(仮名・27歳)は、渡世入りの経緯を苦笑気味にこう振り返った。 「給料のよさに惹かれて建設会社に転職したのが運の尽き。ガラの悪い社員ばかりで、雰囲気が変だと感じていましたが、ある日、社長が裁判を起こされたんです。その裁判対策のために集まった会社幹部がみんなコワモテ。飛び交う言動も、『向こうの弁護士を車で轢け』などと、モロにヤクザなんですよ……」  これはヤバイと確信した山本さんは、数日後に退職届を懐に入れて社長室を訪ねたという。 「ところが、さすがヤクザですよね。機先を制してくるんです。『おまえ、ウチがどういうとこか、もうわかっとるやろ? 盃やるから正式に組に入れや』ってね。ここでそうくるか!と戦慄したのですが、思わず『あ、ハイ』って言っちゃって、今に至ります。と言っても、普段は建設会社の社員として働いて給料をもらって、休日は組事務所の当番に入るだけ。ヤクザになっても生活はあまり変わってないです」  ヤクザとしての経歴がつくと、暴排条例により、アパートを借りられない、銀行口座をつくれないなど、多くの不都合に見舞われる。しかし山本さんは「なってもうたからしゃーない。親と子の任俠の繋がりがあるからな」と、しっかりヤクザ思考に染まっている。組長には、人の素質を見抜く目があったということかもしれない。

原発の除染作業に行ったら組員に…

 そしてもう一人、工藤悟さん(仮名・25歳)も、言葉巧みに組織に引っ張り込まれた口である。 「原発の除染作業に行ったら、同僚のヤクザと仲よくなってしまいました。仕事が終わって一緒に飲みにいくうち、自然と『おい、兄弟』と呼ばれるようになって、なんだか悪い気がしないから、こっちも相手をそう呼ぶようになっちゃったんですよ」  ヤクザ業界の人手不足も知らず、脇が甘すぎる工藤さんだが、除染の作業期間が終わると、案の定、「兄弟に大事な話がある」と組事務所に呼び出されたという。 「脇に兄弟分が直立不動。親分がソファにドカッと座って、『若いのにしっかりした男だ』と、褒め言葉をくれるもんだから、やっぱり嬉しくなっちゃった。今、悪い人はみんな半グレになるから、ヤクザのなり手がいない。だからヤクザはどんな人間でも無理やり入れようとするんですよね。そんなこと、当時は知らなかったから、結局、部屋住みで電話番をすることになりましたが、このままだと本当にヤクザにされて後戻りできなくなるんじゃないかって、毎晩落ち込んでます」  兄弟分を悲しませたくないという葛藤に悶え続ける工藤さん。そろそろ組から逃げだそうと考えているという。
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若手獲得のためヤクザもホワイト化!?
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