ライフ

五月病でボロボロの新人OLを救った「父の言葉」が深くて泣ける

アルバイト経験さえなく、仕事でミスを連発

「勉強ばかりでアルバイト経験のない私にとって、すべてがチンプンカンプン。社内の人に質問するのさえ一苦労で、ミスばかり。なんで聞いてくれなかった? どうして言わなかった? 毎日叱られ、入社1週間でもう孤立感が凄くて。ただでさえ自信がないのに、もっと俯いてビクビク過ごすように」 混乱 すでに兄たちは独立。必然的に父と母の視線は自分に集中する。ヘトヘトになって帰宅しても、両親をガッカリさせまいと明るく振る舞った。 「母は仕事について積極的に聞いてくるので、正直しんどかったです。大丈夫、なんとかこなせているよ~って答えるのが精一杯でした」  同じ時期に父親が取締役に昇進し、以前よりはるかに家に居る時間が増えた。彼女より早く帰宅するのも当たり前に。 「社会人生活1か月目が終わる頃、父が居間で映画を観ていました。帰宅した私もなんとなく一緒に見ていると、画面から目を離さないまま父が言うんです。辛いだろう? って。私、なんか感極まっちゃって、ワーッと泣いてしまいました」  働くというのは楽しいものじゃない。嫌なことばかりだ。耐えられないと感じたら辞めて構わない。そう冷静に話す父親に彼女は驚いた。 「仕事一筋の堅物ですから、会社を辞めるなんて絶対に許さないだろうと思っていました」  お前は何でも完璧にやろうとし過ぎる。お父さんたちが悪いのだけど、もっと適当でいい。勉強はやればできるようになるが、仕事は違う。辛くて仕方ないなら向いてない。向いてないことはやる必要ない。 「そんな感じの哲学をゆっくりと話され、私は涙流すところではなく面食らって。ただ、ありがとうとしか言えず……」  心身ともに疲れ切っていた綾さんにとって、無愛想ながら優しい言葉は何よりの癒しとなった。 「もう来月から職場に行かないと言っても構わない。望むなら就職先だって紹介する。でも、お父さんのコネを使うのは最終手段だ。今以上にプレッシャーがかかるし、逃げづらいから。ただ、そういう選択肢もあると知って欲しい。こう言われて、また号泣ですよ」  結局、彼女は辞める新入社員が続出する5月を乗り切り、気付けば勤続6年。若手にも関わらず複数のプロジェクトを任される立場になった。 「ひたすら勉強漬けだった人間にとって、社会は初体験ばかり。一気に自信を失って、優秀とされる子ほど、早めに折れてしまうんですよね。だけど、必死にならなくてもOK。辞めたって問題ない。仕事人間の父が言うんですから、きっと間違いありません。少なくとも私はそう信じて勤め人を続けています」<取材・文/金井幸男>
編集プロダクション勤務を経て、2002年にフリーランスとして独立。GETON!(学習研究社)、ストリートJACK(KK ベストセラーズ)、スマート(宝島社)、411、GOOUT、THE DAY(すべて三栄書房)など、ファッション誌を中心に活動する。また、紙媒体だけでなくOCEANSウェブやDiyer(s)をはじめとするWEBマガジンも担当。その他、ペットや美容、グルメ、スポーツ、カルチャーといった多ジャンルに携わり、メディア問わず寄稿している。
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ