更新日:2023年03月21日 16:29
仕事

コンビニなのにまるで“ウーバーイーツ”…店員が困惑する常連客の例外ルール

配達料は玄関で犬に飛びつかれながらコーヒーの一気飲み?

宅配

一度“例外”を認めてしまうと、その後もアリになってしまうことが多い。中でも「宅配」は手間がかかるので厄介だが、それだけではない…

 「名物おばさん」のマンションはかなり古い。呼び鈴を鳴らすと奥からものすごい興奮した犬の鳴き声がする。かなり待たされてから、「は~い」と扉を開けた「名物おばさん」の脇をすり抜け、大型犬が私に飛びつく。 「ぎゃっ!」 犬 10個入りのたまごが割れないようにかばいながら犬に抱き着かれる私。正直犬は得意ではないのだが……そんな私の様子を気にも留めず「名物おばさん」は言い訳めいた口調で私に言った。 「ごめんなさいねえ~。ほら私、足が悪いでしょう? 今日みたいな日はおたくの店に行くのもしんどいのよ~。ほら、うち11階だから。エレベータ―乗るのもしんどくてねぇ。それでもね、どうしてもの急ぎの時にはお願いすることにしてるのよ」  よく見ると「名物おばさん」はすっぴんであった。いつもは派手なメイクなのに……。格好もパジャマ……? 「はい、これ御礼ね。飲んで!」  と指差された玄関の棚を見ると、50mlほどのカップにコーヒーが注がれている。隣には1粒のチョコ。 「あ、いえ、結構です。もう戻らないといけないので」  商品の金額はもらっているわけだし、知らない人に出されるものは口に入れるのに抵抗があるため丁重にお断りをしようとした、が。 「いいから!飲んで!ほら!早く!」  ……そうか高谷さんが言っていたのはこれか。半強制的にコーヒーを一気飲みさせられる事態に。私は勤務中になにをやっているんだ……。店に戻ると、困惑する私の表情を見てニヤリと笑う高谷さん。 「そう、このお届け物には“コーヒー一気飲み”の刑がついているのだ。だからみんな行きたがらないんだよ(笑)。ちなみに、タイミングが悪いと“犬に突進される”のオプションもついてくる」  最初からそう言ってくれ……。その日以来、私が電話をできるだけ敬遠するようになったのは言うまでもない。その後も何度かうっかり電話を取った私はお届けに行ったのだが、それにしても「知らない人の玄関で犬に飛びつかれながらコーヒー一気飲み」はかなりきつい「配達料」であった(追加料金のようなものは頂いていない)。  しかも「急ぎの時」とはいうものの、配達する商品が「コーヒーゼリー2個のみ」という日もあった。それ、絶対コーヒーゼリー食べたかっただけでしょ~!?<文/松本果歩> 【松本果歩】 フリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり、店長を務めた経験あり。Twitter:@KA_HO_MA ― シリーズ・店員が語る困ったモンスター客 ―
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA
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