仕事

定年破産する人の共通点。“普通の家庭”が危険な理由

本来あるお金の貯め時が晩婚化でやってこない

 田中さんが定年再雇用でどんなに頑張って働いても、家計は毎月20万円近い“赤字”が連続していた。なぜ、これほどのマイナスになるのか。藤川氏は「晩婚化の影響もある」と話す。 サラリーマン「これまで家計の最後の貯め時は、子供が独立してから退職するまでの期間でした。もし30歳で子供が生まれたら、52~53歳で大学を卒業して独立ですよね。そこから7年ぐらいは退職までに時間がありますから、本来ならばその期間でお金を貯められるはずでした。  しかし、最近は晩婚化の影響もあり、結婚も出産も遅くなると、子供の受験・独立を、60歳の定年期に迎えてしまいます。役職定年、定年再雇用で賃金が下がっているのに、住宅ローンや、高い教育費がある家計は、よほど貯蓄がない限り辛くなることは確実です」  この“貯め時がない”問題はデータに表れている。明治安田生命保険の調査によると、世帯での貯蓄額がゼロと回答した50代男性が20.7%もいた。つまり5人に1人が貯蓄ゼロ。これは貯蓄のない20代男性とまったく同じ割合だ。 ===== <世代別貯金0の割合> 20代……20.7% 30代……14.8% 40代……17.8% 50代……20.7%(50代は5人に1人が貯蓄ゼロ!) 60代……12.6% 70代……18.5% (明治安田生命「『家計』に関するアンケート調査」より) =====  田中さんも定年を越えてから長男、次男が大学入学して、虎の子の貯金と退職金が消えた。せっかく購入した戸建てを売りに出し、老後資金の補塡を考えたが……。 「少子高齢化で人口減のため、住宅の価値が下がっています。特に郊外の家をいざ売ろうとしても、二束三文。持ち家は大型冷蔵庫と一緒。耐久消費財なので、壊れたら無駄に固定資産税もかかって大変。最後は家電と一緒で、お金を払って引き取ってもらうことになります」  とは、経済ジャーナリストの荻原博子氏だ。事例の田中さんも積み重なる赤字に遂には住宅ローンを滞納して、マイホームは“差し押さえ”になったのだ。荻原氏は、田中さんのように“定年世代の普通の幸せ”こそが破産状態になりやすいと話す。 「終身雇用や年金制度が崩壊した今、思い描いてきた“普通の家庭像”がもはや一部の高所得者だけのものになっています。いわゆる『親の呪縛』です。高い生活水準に慣れてしまっている現在の定年世代が、改めて100g1500円の牛肉から、100g300円へと豚肉の生活レベルを落とせるでしょうか? 定年破産する人たちは、そんな“現実”から少し目を背けているような印象があります。生き残るためには安くてもいいという意識に変えないといけないのです」  55歳の崖から始まる定年破産に、まだピンときていない30~40代もいるであろう。しかし、前出の加谷氏は、「今後、全世代に起こり得る問題」と警鐘を鳴らす。 「賃金と人口が年々減っていく中で、超高齢化社会を日本は迎えていきます。そのため年金も現在の50代は68歳支給、現在の40代は70歳支給に引き上げられることも十分考えられます。つまり、70歳支給ならば定年後に10年間は赤字家計が続くのです」  賃金の低下、固定費が高い、さらに晩婚で貯め時がない。思い当たる読者も多いことだろう。定年破産は全世代に共通する、恐怖なのだ。 <定年破産する人の共通点> ①55歳の役職定年・定年再雇用で賃金低下 ②住宅、教育などローンが残り固定費が高い ③晩婚で貯め時を逃したままで定年に突入する 【加谷珪一氏】経済評論家 中央省庁のコンサルティング業務を経て現職。テレビ、ラジオのコメンテーターの仕事も行う。『定年破産絶対回避マニュアル』『お金持ちの教科書』など著書多数 【橋本明子氏】ファイナンシャルプランナー 卓越した生命保険と金融サービスの専門家による国際組織「Million Dollar Round Table」の会員。全9社を扱う保険商品組み合わせのプロ 【藤川 太氏】ファイナンシャルプランナー 自動車会社勤務を経てファイナンシャルプランナーに。2万世帯以上の家計診断を行う。著書に『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新聞出版)など 【荻原博子氏】経済ジャーナリスト 日本経済の仕組みを生活者の視点からわかりやすく解説する。各メディアで活躍中。近著は『老前破産』『安倍政権は消費税を上げられない』など多数 ― 定年破産する人の共通点 ―
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