更新日:2019年06月29日 19:28
恋愛・結婚

「ポルノ映画なのに感動する」と海外で大人気。女性監督エリカ・ラストの魅力

制作現場風景

毎回30人以上のスタッフで作品が作られている

日本のAVのモザイクは海外では特殊な事例

 そんななか、ラスト氏は日本のポルノ作品における性器のモザイク処理について強く疑問を抱き、その不自然さをこう表現する。 「セックスはタブー視されるものでもなんでもなく、性的欲望は当たり前のこと。その中で、多様の性のあり方がポルノの中で表現されるべきなのです」  現在、日本の法律において、モザイク処理なしのポルノ作品はわいせつ物として扱われ、そのような作品を流出させると2年以下の懲役、または250万円以下の罰金料を課せられてしまう。  有名な1978年の「愛のコリーダ事件裁判」(※)において、大島渚監督が「わいせつ、何が悪い」と言い放ったように、実際に社会的にも「わいせつ」の定義は曖昧である。一説によれば、現在の日本のアダルトビデオでは、「挿入行為は行っていない」という建て前の上で、モザイク処理がなされているそうだ。  人間の本質的な活動であるはずの1つであるセックスを「わいせつ」という言葉のなかに押しとどめていては、性教育やその先にある本質的な意味での男女平等は成し得ないのではないのだろうか。  現在、欧米のポルノ産業で監督エリカ・ラストは、無視できないほどの影響力を持ちつつある。日本にもオルタナティブ・ポルノ――性的衝動ではなく、性的感動を生むポルノ――の波紋が届くのも遠い先の話ではない。令和の新時代は、ポルノの価値観を再考する必要があるのではないだろうか。 ※「愛のコリーダ裁判」 1979年に同映画の脚本と宣伝用スチール写真が掲載された書籍が、猥褻物頒布罪として大島渚監督と出版社社長が検挙起訴された。結果、最高裁にて無罪判決。 <取材・文/小高 麻衣子> ロンドン大学東洋アフリカ研究学院人類学・社会学PhD在籍。ジェンダー・メディアという視点からポルノ・スタディーズを推進し、女性の性のあり方について考える若手研究者。
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