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電撃的な米朝トップ会談…トランプ大統領の腹の中

中国の習主席はどのような青写真を?

 一方、中国の習主席はどのような青写真を描いていたのか……。共同通信社客員論説委員で星槎大学大学院教授の佐々木伸氏が話す。 「習主席は、今回の会談が不調に終わっても、来年の米大統領選まで待つ腹づもりだった。G20直前、習主席は紅軍(中国共産党)の長征(1934~36年)出発地を訪れ、『我われは今こそ新しい長征に出る』と長期戦を示唆したのがその証しであり、選挙を控えたトランプ大統領は、そこまで突っ張れないだろうという読みがあったのでしょう。  というのは、制裁第4弾が発動されれば、中国へのダメージを受けるのはもちろん、制裁対象はアップル社の製品をはじめ一般市民の生活に影響が大きい品目が大部分を占めており、米国の好景気を支える旺盛な消費に影を落としかねず、米国経済も少なからず返り血を浴びることになるからです。  今回、トランプ大統領が譲歩したことで話が前に進んだという見方は誤りで、中国の顔を立てたかのように見えるのは交渉再開の口実を中国に与えるためであり、中国から何らかの “見返り”があったと見るべき。G20前から交渉の切り札として中国はレアアースの全面禁輸をちらつかせましたし、今回は北朝鮮カードも切ったのではないか」  G20最終日の午前8時すぎ、トランプ大統領は突然、自身のツイッターに「もし金(正恩・朝鮮労働党)委員長がこれを見ているならDMZ(非武装地帯)で握手してあいさつする用意がある!」と投稿。これを受けて、北朝鮮の崔善姫第1外務次官が「非常に興味深い提案だ」とする談話を発表し、一気に30日の電撃会談が実現する流れとなった。 「この場所でお会いできるとは思っていなかった」  板門店でトランプ大統領と堅い握手を交わした金委員長はそう歴史的な邂逅を評したが、今回のトップ会談がトランプ大統領の気まぐれで実現したわけではなく、あらかじめ用意されていたサプライズ演出だったと見るほうが自然だろう。これまで仲介役を自認していた韓国の文在寅大統領が板門店の会談では蚊帳の外に置かれていたことからも、今回の会談をセッティングしたのはG20直前に金委員長と会談していた習主席なのではないか、といった憶測も飛び交っている。佐々木氏が続ける。 「習主席の訪朝は、金委員長に対し変な動きをしないよう釘を刺したと思われるが、対米的には、北朝鮮の後ろ盾である中国のプレゼンスを改めて示すことになった。トランプ大統領が突然、韓国と北朝鮮の国境にあるDMZに行ったとしても、これによって北の非核化が進展するとは考えにくいが、米国の現職大統領がいまだに冷戦時代を引きずるDMZを訪れて“ならず者国家”のトップと握手すれば、金委員長を手なずけている画が全世界に配信される。大統領選に向け、これほど絶大な効果のある選挙運動はないでしょう」  佐々木氏の指摘する通り、米国メディアの多くは今回の電撃会談を「選挙目的のパフォーマンス」と断じているが、北朝鮮を巻き込んだ米中間の対立は、これで本当に収束に向かうのか? しばらくは目が離せない状況が続きそうだ。 取材・文/日刊SPA!取材班 ※週刊SPA!7月2日発売号「今週の顔」より
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週刊SPA!7/9号(7/2発売)

表紙の人/ 日向坂46

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