平均51歳で発症する若年性認知症「会議を忘れてた」が兆候かも
前述の研修大府センターの調べでは、若年性認知症となってからの収入は、家族の収入が5割以上を占め、あとは本人の障害年金や生活保護費に頼らざるをえない。「発症後に収入が減った」という人は6割を超え、半数以上が「生活が苦しい」と答えている。症状が重度になれば、就労はさらに困難になり、将来への不安は計り知れないものとなる。
現状では、認知症を完治させる方法はない。また、若年性の場合、年齢が若いぶん、高齢者と比べて脳が萎縮していくスピードも速いため、早期発見が何よりも重要で、唯一の対策といえる。
「認知症の治療法は、薬での処方しかなく、症状の進行を遅らせることしかできません。発症原因も高齢者と違い、生活習慣の問題よりも遺伝的な要素が強いので、近親者に若年性認知症の人がいたら、注意が必要です。誤診を避けるためにも、『日本認知症学会』と『日本老年精神医学会』に所属している専門医がいる医療機関で受診することをおすすめします」(朝田氏)
他にも、対策として生命保険の活用がある。保険会社によって異なるものの、生命保険には、高度障害保険金などがあり、若年性認知症の人も該当する可能性があるが、朝田氏によると、あまり知られていないのが現実だという。
高度障害保険金を扱っている大手生命保険会社に問い合わせてみると、以下の回答があった。
「弊社では、年間約1200件、高度障害保険金に該当する案件があります。ただ、そのなかで若年性認知症の人がどのくらいいるのかは、はっきりわかりません。その理由は、あくまでも判断基準は病名ではなく、症状だからです。たとえば、食事や歩行がご自身ではまったくできず常に他人の介護を要したり、言語機能を失ったり、約款に定める所定の状態となった場合は、お支払い対象となります」
若年性認知症でも、高度障害保険金受給の対象となりうることは、しっかり覚えておくべきだろう。
また、保険と同様、社会の側も認知症へのサポートを拡充させている。政府が’12年に策定した認知症施策推進5か年計画(通称オレンジプラン)、その後の第2次オレンジプランで若年性認知症コーディネーターが各県に配置される、コールセンターが開設されるなど支援体制は整いつつある。
だが、前出の森氏によれば、発症した本人と家族がその支援体制の存在を知らないなど、課題はあるという。誰でも発症しうる病と捉え、備えをしておくべきだろう。
<取材・文/福田晃広・野中ツトム(清談社) 写真/PIXTA>
※週刊SPA!7月9日発売号「40代からの認知症対策」より
【朝田 隆氏】
精神科医。メモリークリニックお茶の水理事長。アルツハイマー病を中心に認知症疾患の予防と治療に携わり、脳機能画像診断の第一人者
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