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かんぽ生命を売っていた元郵便局員が語る、地獄のノルマ・研修・安月給

営業手当のために危ない営業に走る「赤い詐欺師」

 かんぽ生命を強引に売った背景には、厳しいノルマだけでなく「売り上げに応じた営業手当」が指摘されている。日本郵便は2014年4月から、成果主義的な給与制度を導入したのだ。    「入社してすぐの研修で、新たに成果主義の給料体系を導入したという話を説明されました。  驚いたことに、数年後に基本給が2割下がり、あとは、かんぽ生命保険を売った営業手当で稼げ、という制度なんです。  入社前には、『初任給は一般企業よりも低いが、公務員のような安定と、充実した福利厚生がある』と聞いていたのに、全然違うじゃないか!と。 保険の営業ノルマをクリアできないと暮らしていけないような給料を設計されてしまったら、無理な営業をせざるを得なくなる。今回の事件は当然の成り行きですよ」
かんぽ生命

かんぽ生命公式サイトより。「ゆめをかなえる かんぽくん」

 2014年から導入された制度とは、「基本給を80%にダウン=役割基本給」+「基本給の8%=役割成果給」+「営業手当=保険の売り上げに応じて」(渉外営業の場合※)。給与に営業成績がダイレクトに響く。  この営業手当は、新規契約の初月支払い額に応じて決まる。たとえ10年契約でも、手当は最初の1回だから、営業マンはとにかく新規契約をさせようと必死になる。  いま問題になっているような違法スレスレの手法で稼ぐ営業マンを、郵便局のイメージカラーにちなんで「『赤い詐欺師』と現場では呼んでいました」とAさん。  また、顧客がかんぽ生命を2年以内に解約すると、なんと、もらった営業手当を返さねばならない。Aさんのところには、辞めたあとでも、会社から営業手当返還の請求書が来たそうだ。 ※労働政策研究・研修機構の機関誌「ビジネス・レーバー・トレンド」2014.4月号、郵政グループ労組による解説

同僚の営業マンは血を吐いて辞めた

 Aさんがいよいよ退社を決意したのは、かんぽ生命を売っていた同期の退職がひとつの契機だった。   「ある日、携帯で順位表を見たら、自分の順位が上がっていました。嬉しいことですが何かがおかしい。逆に成績トップだった彼の名前がない。どうしたんだろうと、彼個人の携帯に何度もかけてやっと繋がると、彼はこう言いました。 『ごめん、もう無理なんだよ。毎週成績が発表されるたびに、自分が落ちるのではないかと怖くて怖くて。いつも胃がキリキリ痛みながら続けていたんだ。  こないだあまりにも吐き気がしたんでトイレに駆け込んだ。そしたらトイレが真っ赤に染まって。血を吐いたんだ。もうなにがなんだかわからなくなって、病院に行ったよ。  これ以上は仕事を続けることができないと思った。だからごめんな、もう辞めることにしたんだ。あとは頑張ってくれ』と。  彼は、キックボクシングをやっていて、ガタイが大きい好青年です。頑張り屋で、お客さんのファンをつかんでもいました。そんな彼でも壊れてしまったのです」
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なぜ過激な成果主義に?
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