更新日:2023年04月18日 11:26
スポーツ

打倒王者オランダ「目標は金メダル」。女子ホッケー代表「さくらジャパン」 及川栞の「強い決意」

数年前まで代表合宿参加は自費、自炊。体育館にベッドを並べ……

 ホッケーは野球やサッカーなどのメジャー競技ではなく、選手の置かれている環境は決して恵まれているわけではない。いまでこそ東京五輪が近づくなか、代表チームにスポンサーがついたことで海外遠征での個人負担はなくなったが、ほんの数年前までは日本代表といえどもそのたびに社会人10万円、学生8万円などと個人負担をするのが当たり前。国内合宿に至っても、学校の体育館や美術室にベッドを並べ、食事は調理室で“自炊”という厳しさだったという。  環境面は自国開催の五輪を前に大きく改善されつつある。ただ、急激に変わる一方で「アフター東京」を考えると不安がないわけではない。 「また、元に戻っちゃうかも。そういう話は選手やスタッフの間でも出ます」  だからこそ東京五輪では目に見える結果が欲しいのだ。  東京五輪で金メダルの最有力とされるのはオランダで、世界的に見ても実力は頭1つ抜けている、と言われているなか、さくらジャパンは7月のオランダ、イギリスとの連戦に続き、8月に入って世界ランク6位のニュージーランドを招いた強化試合で2連勝。8月17日から21日にかけて東京五輪の会場となる大井ホッケー場で行われた五輪のプレイベントでは決勝でインドに1-2と敗れたものの、予選リーグでは世界ランク2位のオーストラリアと2-2で引き分けるなど準優勝で終えた。  7月のテストマッチ。オランダには連敗したが、2試合ともに得点を奪い、イギリスには連勝した。この結果をどう捉えているのか。 「オランダやイギリス、ニュージーランドとの試合を終えて、いい準備ができている手応えはありました。いままでオランダとやるときは6点差とか7点差という大差で負けてしまっていたのが、今回は2試合とも得点だけみれば接戦に持ち込めたのは収穫。ただ、つなぐホッケーを目指している以上、勝つためには自分たちでボールを持つ時間をもっと長くしないといけないとも感じました。東京五輪のプレイベントではインドに負けてしまい、インドが昨年のアジア大会からレベルアップしていることを強く実感しました。もちろん、この時期にオリンピックの会場となる場所で、試合ができたことはホントにうれしいし、タイプの異なる国々に対し、様々な戦い方をトライできたのはよかったと思います」  メダルを争うライバル国との対戦でいままでにない手ごたえを感じた一方で、課題も口にした。 「自分たちのなかでの目標は金メダル。そう考えると、オランダを倒さないとそこには届かない。やっぱり負けるのは悔しいですから」  チーム力は確実に上がっており、メダル獲得も夢ではない。女子ホッケーは、東京五輪での密かな注目競技といえるかもしれない。そして、前回リオ五輪で土壇場でメンバーから外れた及川は、誰よりも強い気持ちを持って東京を迎えるはずだ。

オランダとのテストマッチにて。オランダ代表の選手たちとは旧交を温めた

「日本で開かれる五輪に出られるなんて、一生に一度。そのチャンスに恵まれたことにはワクワク感しかない。東京五輪でさくらジャパンが結果を出せば、女子ホッケー全体が盛り上がる。去年はアジア大会で優勝できたので、次は東京五輪。簡単ではないですが、覚悟を持ってアグレッシブに戦いたいと思います」 ●プロフィール おいかわしほり ‘89年3月12日、岩手県生まれ。不来方高校、天理大を経て、’11年にソニーHC BRAVIA Ladiesへ加入。’16年からの2年間はオランダのオラニェ・ロートへ期限付き移籍し、3年目の’18-‘19シーズンはプロ契約を結ぶ。’19年夏に帰国し、岩手めんこいテレビに所属(正社員)しながら、東京ヴェルディでプレー。’18年アジア最優秀選手。ポジションはDF 。164cm、58kg 取材・文/栗原正夫 撮影/ヤナガワゴーッ!
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