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南野拓実のボールを持たないときのスゴさ

日本代表でこそ磨かれる前線での繋ぎ

 そして、日本代表としてコンスタントに出場するようになってから本人が「意識している」と語るのが、“ビルドアップの中での繋ぎ”だ。特にモンゴル戦では、伊東純也らがボールを持った際に絶妙なタイミングで相手の間に顔を出してパスコースを作り、アタッキングサードでの潤滑油的な役割を果たしてみせた。 「代表ではアジアの引いた相手とプレーすることが多く(ザルツブルクでの試合と比べて)ポゼッションする時間が長いので、ビルドアップの際に“動き続けながらパスを受ける”意識が強くなったと思います。前線でスペースが無いので、良いタイミングで動いてパスコースを作って、そこで出てこなかった際にはもう一度動き直して。ヨーロッパでの試合とはやり方が少し違うので、(代表でプレーすることが)自分の成長にも繋がっていると思います」  モンゴル戦の前半34分には右サイドで伊東が相手DFと対峙した際に完璧なタイミングでパスを引き出しワンツーに成功。最後は長友のゴールに繋がった。インサイドキックでの何でもないワンタッチパスにも見えるが、南野のフォローによって一気に相手3人を無力化したプレーだった。 「自分がうまく味方をフォローしてああいう形を増やせればスペースが無くても自分たちで崩せると思うので、もっと効果的な動きを増やしていきたいです」  日本代表はこれまでのアジア予選でも、引いた相手を崩しあぐねる展開を何度も経験してきている。おそらく今回の予選でも、「押し込んではいるものの点が取れない」という状況は必ず起きるだろう。  さらには本大会でも、相手にリードされて終盤を迎えた際には、引いた相手を連動して崩さなければならない場面が必ず出てくるはずだ。世界の強豪国と比べ体格が劣る日本代表は、ビハインドの終盤にロングボールを多用して押し込むという戦い方が使えない(やれなくはないが有効ではない)。そうなった時に、南野のように相手の間の僅かなスペースで味方の連携を誘発できる「前線のリンクマン」は必ず必要になってくるはずだ。  日本で長らくエースとして君臨している大迫勇也もこのパスの引き出しと繋ぎを得意とする選手ではあるが、大迫はよりゴールに近い位置でプレーするのを得意としている。その大迫と中盤のアタッカー陣の間で南野が潤滑油のような役割を果たせれば、日本の前線の連動性は一気に高まるはずだ。当然、その流れの中から南野が前を向いて勝負できるシーンも増えるだろう。  自分で決めきる得点力に加え、味方の化学反応をも誘発できる南野拓実。ボールを持たずとも相手の脅威となれるこの男が、次世代のエースとなる可能性は十二分にあるはずだ。 取材・文/福田悠 撮影/藤田真郷
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129
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