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『カメ止め』大ブレイクの上田慎一郎監督が新作映画の舞台裏を語る

無名俳優だからこその“ドキュメント性”

――『カメ止め』に続いて、今作でもほぼ無名の役者さんたちをオーディションで起用していますね。 上田:ちょうど昨日(取材日の前日)が完成披露試写会だったんですが、上映前にキャスト18人と僕が壇上に立ったときは、観客全員が「誰?」という反応でした(笑)。でも、上映後に再登壇すると、今度は一人ずつあいさつするたびに笑いと歓声が起こって、それにはすごく感動しました。それまで知られていなかった人を起用する喜びのひとつですね。 ――ほかに、無名のキャストを使うことの醍醐味はありますか? 上田:売れない役者の役を売れてる俳優が演じても、見ている人は「いや、売れてるじゃん」と思ってしまったり、どうしてもフィクションとして割り切って見るしかない。でも、本当に売れない役者が演じることで、ある種のドキュメントになって、より多くの共感やリアリティが生まれると思うんです。 ――『カメ止め』でも、ワンシーン・ワンカットの緊迫感は、演技ではなく“本物”でしたもんね。 上田:映画って、作り手側のドキュメントが映り込んでしまったとき“特別な作品”になると思うんです。『カメ止め』でも今作でも、撮影前にキャストを集めてワークショップをしたり、リハーサルをしたり、まずチームをつくって話し合う時間をたっぷり取るのが僕のスタイル。そうやって撮影前にガッチリ固めておくけど、現場ではトラブルも含めたドキュメント性を大事にする、というのが自分の撮り方かもしれませんね。 ――では、今回もそういったドキュメンタリー要素が? 上田:主人公の和人を演じた大澤数人は、この10年で3本しか芝居の仕事をしたことがありません。それがいきなり150館規模の映画の主役に抜擢されて、とてつもないプレッシャーと緊張のなか、本当に気絶しそうになりながら芝居を続けていました。だから、そこはある意味ノンフィクションなんですね。ほかのキャストに対しては、緊張をほぐすようにしていたんですが、彼だけは別。「ここはマジでミスできないからな」「お前、主役なんだから集中しろよ」と、わざと心を鬼にしてプレッシャーを与えていました(笑)。 ※10/21発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです 【上田慎一郎】 ’84年、滋賀県生まれ。インディーズ時代は国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得。劇場長編第1作『カメラを止めるな!』は興収31億円を超える社会現象に。自主制作の主な監督作に、短編『ナポリタン』(’16年)、長編『お米とおっぱい』(’11年)など 取材/福田フクスケ 文/東田俊介 撮影/鈴木教雄 小道具協力(カメラ)/AWABEES(渋谷区千駄ヶ谷 3-50-11 明星ビルディング5F)
大学を卒業後、土方、地図会社、大手ベンチャー、外資など振り幅広く経験。超得意分野はエンタメ
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週刊SPA!10/29 号(10/21発売)

表紙の人/ アキシブProject

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