『カメ止め』大ブレイクの上田慎一郎監督が新作映画の舞台裏を語る
製作費300万円のインディーズ映画ながら口コミで評判が拡大、興行収入31億円を超え、社会現象を巻き起こした映画『カメラを止めるな!』。だが、脚本・監督を手がけた上田慎一郎は、大ヒットのプレッシャーから、次回作の台本がまったく進まないスランプ状態に陥ったという。これまで数々の失敗やトラブルを経験し、ドキュメンタリーのような人生を送ってきた彼が、初めてぶつかったスランプを乗り越えた方法、そして、映画作りの上でこだわる“ドキュメント性”とは――?
初の劇場長編監督作『カメラを止めるな!』(以下、『カメ止め』)が社会現象を巻き起こすほどの大ヒットとなった上田慎一郎監督。彼の待望の第2作『スペシャルアクターズ』が現在、絶賛公開中だ。
俳優事務所が営む“何でも屋”稼業に参加することになった、売れない役者の和人。カルト集団から旅館を守ってほしいとの依頼を引き受けるが、和人には「緊張すると気絶してしまう」という弱点があった……。
『カメ止め』旋風による期待とプレッシャーから生まれたストーリーは、監督自身の経験や心情も反映されているという。製作過程で直面した創作の生みの苦しみとともに、監督の現在地に迫った。
――『カメ止め』以降、環境がだいぶ変わったんじゃないですか?
上田:オファーをたくさんいただくようになって、劇的に忙しくなりましたね。そこで、僕と妻のふくだみゆきと、幼稚園からの幼なじみの3人で「PANPOCOPINA」という映画製作会社を立ち上げて、自宅も都心に引っ越しました。街中で声をかけてもらうことも増えましたし。僕自身はそんなに変化したつもりはないんですが、周りの接し方は変わってきましたね。前はそんなに俺に興味なかっただろう、って(笑)。
――今作『スペシャルアクターズ』の製作にあたっては、プレッシャーからかなりのスランプに陥ったとか。
上田:『カメ止め』公開中から、「次回作のプレッシャーはないですか?」と聞かれていたんですが、当時はまだピンときていなかったんですよね。それが、興収31億円以上の大ヒットになって、日本アカデミー賞優秀作品賞や監督賞もいただいて、ガラリと状況が変わった。いざ今作の企画と向き合ったときに、それまで浴びてきた期待の言葉が一気にのしかかってきたんです。『カメ止め』に寄せるべきか、いや、似せないほうがいいんじゃないかと考えすぎて、とてもクリエイティブなことが考えられる状況ではなくなってしまって。
――いつの間にか自分のやりたいことができなくなっていた、と。
上田:映画を作る目的が「世間の期待に応えること」になっちゃっていましたね。クランクインの2か月前に台本の初稿を見せる予定だったのが、行き詰まって一度ゼロに戻したんです。キャストやスタッフにも「苦しい。書けない状態だからみんな力を貸してほしい」とはっきり打ち明けました。監督としての威厳やプライドなんて関係ない。映画が面白くなることのほうが大事ですから。
――そのスランプは、いつどのように脱したんですか?
上田:キャストのみんなにアイデアやキーワード、自分がやりたい役などを自由に話してもらったのをヒントにしました。妻も含めて、弱音を吐いたり、忌憚のない意見交換をしたりできる人がそばにいたのは助かりました。最終的には、「緊張すると気絶する」という主人公の設定が浮かんだとき、「あ、これは面白くなるぞ」と光が見えましたね。
『カメ止め』後の知られざる大スランプ
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大学を卒業後、土方、地図会社、大手ベンチャー、外資など振り幅広く経験。超得意分野はエンタメ
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