“避難所での犯罪トラブル”を自衛隊は取り締まれない? 盗難、暴行、強盗…
その67 災害派遣の避難所の秩序と自衛隊の警察権
台風19号は日本列島各地に記録的な豪雨を降らせました。調査の結果、71河川の128か所で決壊。16都県の延べ265河川で越水が確認されるなど、各地で甚大な被害をもたらしました。自衛隊は『令和元年台風19号に係る災害派遣』を行い、情報収集、救難活動の後、給水や入浴、炊き出しなど支援活動を行っています。
日本では小中学校の体育館や使っていない教室などが避難所に充てられることが多いのですが、Twitterで今回の台風19号災害で避難所となった学校の部屋が「ペット同伴不可だったはずなのにペットの毛や糞尿まみれ」「使用済みおむつの放置」「学校の書類が漁られた」といった問題が赤裸々に伝えられていました。
学校にはアレルギーのある子供たちもいるため、清掃後も、万が一にもアレルギー症状が出ないようにと窓を開け放って授業を行ったとのことです。被災者は心の余裕もないほど疲れ、傷ついていることでしょうが、最低限のモラルは守ってほしいものだと思います。
阪神淡路大震災の際に神戸市内で避難所生活を経験した兵庫県在住の友人がいます。彼女の話によると当時、避難所では断水のためトイレは使えないはずなのに、それでもトイレで大便をしようとした人が多かったため、使用禁止のトイレに大便がうず高く積み上がっていたようです。(仮設トイレが行き届くまでの話だそうですが、そのような状態を「原状回復」した人がいるわけです。その仕事の辛さは想像すればわかりますよね(涙)。
さらに、避難所では盗難、強姦、暴行などの事件も起きましたが、一部のことで全国のボランティアの足を遠ざけることはできない(大半の避難所は人手不足のなかでギリギリの自治を保とうとしていた)、表沙汰にしてほしくないという暗黙の了解の下、大きく報じられることはありませんでした。
避難所のお世話をする役所の職員が怒鳴られ、暴行まがいの行為を受ける場面もあったそうです。彼女が見たのは特殊なケースかもしれませんが、力の強い人たちがルールを無視して条件のいい教室を支配し、大騒ぎで酒盛りをするような弱肉強食の場は確かに存在したのです。避難所にはさまざまな人が集まり、警察権を持たない役所の人やボランティアがそのお世話をします。
「そんな修羅場を目にしたので、平和な日常があっという間に崩れ去ることの恐ろしさは身に沁みています。瓦礫の街で、自衛隊の迷彩服を見るたびに心からホッとしたものです。自衛隊は秩序正しく、頼もしく優しい存在でした」と彼女は言います。
しかし、自衛官には「騒ぎを起こす人を取り締まる権限」はありません。「治安出動命令」が下命されていない場合、自衛隊は一般市民に対して治安維持のための「警察権に準じる活動」ですら行うことはできないのです。
それを知った時は彼女もショックだったそうですが、それでも、自衛官がいるだけで間違いなくその場の雰囲気は変わる(安心感が違う)のだそうです。これも立派な抑止力ですよね。そう考えるしかありません。
「避難所」における最低限のモラル
盗難、暴行、強姦も……修羅場と化す「避難所」も
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
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『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
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