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第545回 11月6日「大麻吸ったら小説書けるか」

・違法薬物使用は被害者のいない犯罪だ。快楽のためのドラッグについて、依存性や副作用が少ないものは別にいいじゃないかという意見をよく聞く。けれど、ポイントはそこではない。 ・例えば大麻について。健康への影響はタバコより少ないという意見は事実だろう。しかし自分をコントロールしながら幻覚成分を摂取することはとても難しい。もし今この国で解禁されたら、多くの人々が日常生活を破綻させるレベルで耽溺することになると予想する。 ・音感や色感の拡張効果は明らかだから、クリエーターにとって魅力的なものには違いない。ただし拡張された感覚をイマジネーションに転換して作品に落とし込むためには技術が必要なのである。使用することによって誰でも傑作を創造できるというわけではない。 ・バッド・トリップに至ることはほとんどないと言われるが、だからOKというわけでもない。健康なまま、ハッピーなまま、死ぬことがある。大麻使用者が自死に至る事例は非常に多いのではないか。この点については公正な数字がほしい。 ・少し前の話。しばらく会っていなかった知人に「すごい小説を書いたから読んでみてほしい」と呼び出された。行くとその部屋じゅうに白い煙がもうもうと立っていた。知人はどんよりと濁った目をしていた。 ・小説はと聞いたら「まだ文字に落としてないけど、全部俺の頭の中にある」と言われた。それから、美少女が様々なモンスターに変身して活躍する小説の構想を聞かされた。話は7~8時間続いた。その間、彼は水一杯飲まず、疲れを見せることなく、目をギラギラさせながら怒鳴るように喋り続けた。ただ話の順番が支離滅裂で、そもそも呂律が回っていないから内容がよく聞き取れない。 「小説はともかくお前まず薬抜けよ」  ようやく言葉の途切れたタイミングでそう言うと、 「薬じゃねーよ」  と、怒りだした。そして 「いいからおまえも吸えよ」  パイプに火をともして、押しつけてくる。 「自分でやるぶんには勝手だが、人に薦めるのはやめろ」 「友達じゃないのかよ!」  無理強いするなら今すぐ電話してここに警察を呼ぶぞと言ったら、さすがに黙り、うなだれた。 ・しばらく後にそいつが死んだことを知った。飛び降り自殺だった。 作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。
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