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対生物・化学兵器テロの最前線を担う自衛隊病院。医師が着用するマスクも足りていない

その68 防衛医大・自衛隊病院は生物・化学兵器テロに対抗できるのか?

薬の自給率を守る監視体制は我が国に存在しない

自衛隊

※写真は自衛隊Facebookより

 食料自給率という言葉は認知度も高く、多くの人が関心を持っています。食料を外国に頼り切ってしまうと、何らかの問題で輸入が止まれば、食べものがなくなって餓死者が出るようなことになりかねない。だから、食料はできるだけ国内で100%賄うべきだという考えは一般にも広く浸透しています。  しかし、同じく死活問題に直結しているのに、エネルギー自給率の話になると国民の関心度は下がります。さらに、話題にすらのぼらない医薬品の自給率となると、ほとんどの人は気にもとめないようです。だから、「ある薬」の自給率がすでに非常事態となっているのに大きく報じられないのも頷けます。  抗菌薬という薬は、肺炎や膀胱炎など“バイキン”による感染症の治療に使います。また、手術後の傷の感染症予防にも使用され、大きな手術前後にこの薬が投与できなければ死亡率が上がります。このときにもっとも多く使うのが「セファゾリン」という薬です。ところが、今年の3月から供給が滞っています。なぜなら、この薬の原料を製造しているのが中国の1社だけで、その工場が操業停止となったからです。  その後、セファゾリンの代用薬も芋づる式に不足に陥っています。実は、抗菌薬の原料の大半が中国を始めとする外国でつくられています。厚労省が薬価を安くしてきたために我が国の製薬メーカーは利益にならない事業から撤退し、外国産に切り替えました。生命を守るキードラッグの製造の一端が海外に握られているのです。  これはもはや、安全保障上の問題と言っていいのではないでしょうか。感染症関連の学会は国に対して抗菌薬の安定供給を求めていますが、状況は変わっていません。早晩、手術時の死亡率が跳ね上がるような事態も招きかねず、このまま問題を放置しておいていいのか? 不安になります。

医療における「安全保障」という視点

 もとはといえば、薬品メーカーに無理な値下げを国が押し付けたせいです。昭和の時代は「親方日の丸」という言葉があり、国や自治体など役所の仕事は定価で引き受けてもらえるため、安定した収入が見込め、その利益を元手に産業は大きくなり事業投資もできた時代がありました。  しかし、今は国が事業者を買い叩き、少しでも安く仕事をさせ、モノを納品させようとする時代です。国が事業者をイジメるなんて最悪だと思いますが、財政支出を減らすべきだと考える有権者が多い以上、民意なので仕方ありません。  外国からの安い輸入に頼れば企業利益が上がり、国の財政支出を安くあげることが可能です。でも、それでは国民の命が犠牲となります。安ければリスクは気にしないのでは国民の命が犠牲になります。安全保障の概念を「食料」だけでなく「エネルギー」「医療」「経済」「情報」などに拡大して考えなくてはなりません。  自衛隊には防衛医大という医師を育てる大学があります。防衛医大を卒業した医者は任官して自衛官となり、医官と呼ばれます。つまり、「軍医」です。紛争やテロで起こるさまざまな問題に対処するため、日頃から十分な知識を身につけなければいけません。野戦体制で治療を受け持つ可能性もあり、銃創や爆創のような特殊な怪我を治療する知識や技術も必要です。  我が国の安全保障を担う防衛省職員であり、医師であることを考えると我が国の医療の安全保障を考えるべきは防衛医大であり、この医官ではないかと思います。では、防衛省の持つ自衛隊病院や医官はその機能を持っているのでしょうか?
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生物・化学兵器によるテロが起きたら?
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