“沢尻エリカ容疑者の逮捕日を、警察がマスコミにリーク”の噂は本当か?報道デスクに聞く
11月6日、警視庁は合成麻薬(MDMA)を所持していたとして、麻薬取締法違反の容疑で女優の沢尻エリカ容疑者(33)を逮捕した。その後、テレビのニュースやワイドショーも「エリカ様一色」であることは今さら説明するまでもないが、ネット上ではマスコミの報道に対する疑問、不満が渦巻いている。
TBSでは逮捕前夜の沢尻容疑者の姿が流され、週刊文春は深夜12時から沢尻容疑者が訪れた都内のクラブで張り込みを行っていたといい、逮捕当日の様子を詳細に報じた。
そこでネット上では「警察がマスコミに逮捕情報をリークしているのではないか」という噂が広がっているのだ。
沢尻容疑者の件でいえば、逮捕のニュース速報は日本テレビ系がいちばん早かった。
「速報を打てるというのは、逮捕の事実を一番把握できる警察関係者に通じているという証拠でしょう。相手が警視庁でなく、警察庁の幹部などであればより“確実性”が増します。ですが“誰彼を明日逮捕するから速報流せよ”、なんてやりとりはあり得ません」
しかしその後、TBS系の番組では逮捕直前、自宅に出入りする沢尻の様子を捉えた動画が流れた。『週刊文春』も、逮捕前夜の渋谷区のクラブ内で、沢尻の映像・動画を撮影している。この件については、X氏はこう解説する。
「いくら仲良くなっても、芸能人の誰々が逮捕されるよ、なんて言い方、警察はしません。公務員には守秘義務もありますから、なんとなく匂わすくらい。噂があるね、とか。捜査していないとは言わない、みたいな。そのときに記者が先方と懇意になっていれば、そこは阿吽(あうん)の呼吸で、皆まで言わずにわかるんです」
では、逮捕直前の隠し撮りも、警察のリークのせいではない?
「あれは偶然……いや、我々的にいえば、TBSがあまりにドンピシャのタイミングだった。経済事案など、被疑者が逃げる可能性が極めて少ない事案、違法風俗店の摘発などに関していえば、事前にリークされたり集められたりすることは確かにあります。これは、警察のための広報的な意味合いもあります。『警察24時』だってそうです。
ただ、今回のTBSは事前に沢尻捜査の情報をキャッチして、逮捕のXデーに向けて取材をいち早く展開していた。すると、なんと翌日に逮捕された、ということです」
また『週刊文春』も、約3ケ月にわたって沢尻容疑者と売人女性B子の行動を追っており、その日、B子のイベントがあるクラブに沢尻が行くことを掴んで張り込んでいたという。
「まるで逮捕を知っていたように、確かに見えますね。ですが事情は、もっと単純なことで……」
バツが悪そうに話すのは、大手キー局で警視庁クラブ、司法クラブ記者を経て、現在は報道局デスクのX氏だ。ネット上の噂に“反論”とまでは言いきれないが、その舞台裏を明かす。
警察情報を聞き出そうとするのは記者の”常識”だが…
「警察担当の記者はほぼ毎日、朝と夜に捜査員の自宅へ行き、なんとか仲良くなろう、そして情報を入手しようとしています。これはテレビに限らず、新聞も、ときには週刊誌の記者だってやる。警察担当の記者にとっては当たり前のことです」(報道局デスクのX氏、以下同) これは「朝駆け、夜打ち」もしくは「朝周り、夜周り」といい、警察担当記者が、取材中の事件に関わる警察関係者宅に出向き、捜査状況などの進捗について取材する行為である。「警察への取材により判明」といった類の記事は、警察が記者会見などで広く広報する説明の他に、ここから取られる部分が多くを占め、また他社に対して独自の「(スクープを)抜ける」かにもかかってくる。 他にも、ほとんどの所轄署ではマスコミ対応に当たるのが副署長というパターンだが、この副署長を狙い撃ちにしようと躍起になっている記者も少なくない。 「副署長といえば、その署で二番目に偉く、管内で起きた事件事故の捜査状況をほぼ把握しています。誰彼があの署の“副”になるらしい、と聞いた瞬間から自宅に酒を持って挨拶に行き、飲みに連れ出して懇意になろうとすることもある」 ここが核心部分になるだろう。「警察からこっそり教えてもらうこと」について、ネット上では「警察の守秘義務違反ではないか」と騒ぎになっている。 確かに「違法薬物は10年以上前から使っていたと供述している」という報道だって、警察しか知りえないことであり、この手のリークはよく見かける。 とはいえ「〇日に誰々が逮捕される」という逮捕情報まで漏らすことはあるのか?警察は匂わせるだけ、明確な言い方はしない
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新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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