マスコミは詳細な“捜査情報”ではなく「捜査している」という情報を掴んで取材を開始する。沢尻が捜査されているとなれば、以前から噂のあった薬物関連である可能性が高いという見立てができよう。 　薬物犯罪は、大麻であれば所持の現行犯でしか逮捕できない。その他の薬物でも、使用の証拠となる尿検査の陽性反応だけでは、即立件が難しい場合がある。 　例えば「知らないうちに酒に混ぜられた」と供述が出れば、その捜査にも時間が必要だ。芸能人を逮捕したからには「立件見送り」ではメンツも立たないため、なんとしてでも所持の「現行犯」として身柄を抑えなければならない……そんな当局の事情を鑑みれば、沢尻容疑者が薬物を使用しそうな場所から帰る日、つまりクラブ帰りの週末夜などに「自宅に張る」という判断ができるという。 「今回、TBSには各社完敗です。事前に誰々が逮捕される、という情報がもらえるのなら、私だっていくらでも払うから教えて欲しいと思いますよ。マスコミにリークして、被疑者に漏れて捜査がオジャンになったら、それこそ警察内部で徹底的に犯人探しが行われるでしょう。 　他にもネット上には、”安倍政権の『桜を見る会』をめぐる不祥事から目をそらすため”なんて陰謀論もあるみたいですが、そんなワケがない。先ほども言ったように薬物事案はとにかくセンシティブ。目をそらすためなら野党の疑惑議員の噂なんていくらでもあるんだし、わざわざ芸能人の薬物事案を持ってくる必要もない」 　こうした「憶測」ばかりがリードし、肝心の「薬物犯罪」への厳しい視線を大衆が忘れていることが問題とも思える。同じような勝手な憶測を持ってみれば「警察とマスコミの関係」について騒ぐ人々は「薬物使用が犯罪だ」という風潮をかき消すためにやっている、などといった馬鹿げた妄想さえ可能になる。知らない事実について、自身の都合、憶測によって補完することの危険性は、もっと周知されるべきだろう。＜取材・文／山口準＞新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。